もしも彼が8月のような不調のままで、最後の1ヵ月を過ごしていたら、新人王投票で7人の記者が入れた3位票ですら集められなかったかもしれないし、サイ・ヤング賞投票で38ポイントも獲得できなかっただろう。
それぐらい、今年のナ・リーグ新人王レースはレベルが高く、新人王を獲得したポール・スキーンズ(パイレーツ)は23試合、133.0イニングで11勝3敗、防御率1.96。投票2位だった21歳のジャクソン・メリル(パドレス)は、156試合で打率.292(OPS.826)、24本塁打、90打点、16盗塁。20歳のジャクソン・チューリオ(ブルワーズ)も、148試合に出場して、打率.275(OPS.791)、21本塁打、79打点、22盗塁と、いずれも素晴らしい数字を残していた。
「新人王4位だろうが、サイ・ヤング賞5位だろうが、結局はタイトルを取れなかったのだから意味がない」と思う人もいるだろうが、それは違う。
MLBにおける各賞は、選手にとっての履歴書のようなもので、たとえば引退後の選手が語られる時、「◯年の新人賞レースで◯位、サイ・ヤング賞レースで、◯位だった」となるのが常だ。MLBネットワークの「MLB Tonight」に出演した元レッズのショーン・ケイシーが過日、こう語っていた。 「僕は12年もプレーして、オールスターにも3度出場しているけれど、賞にはまったく縁がなかった。でも、MVP投票で票を入れられたことはあるし、票は入らなかったけど殿堂入りの候補にも選ばれた。それだけでもう十分、名誉なことなんだ」
大事なのは、MLBが今永をラスベガスに招待したように、「2024年に活躍した選手」として認知されることなのだと思う。
そういう意味では、5位ながら1票が入った菊池雄星投手や、ほとんどすべての打撃部門で昨年の成績を上回り、(日本ではなじみが薄いだろうけれど)シルバースラッガー賞の外野手部門で最終候補に残った鈴木誠也外野手も同じだ。
我々、日本メディアへの自戒を込めて書くのだけれど、日本の情報番組や、野球関係のYouTuber、あるいはXやインスタグラムなどのSNSが横並びになって「大谷翔平」で盛り上がるのは仕方のないことだけれど、大谷の他にも活躍した日本人選手たちがいるという事実を、MLB主導ではなく自分たちでもっと、広く認知してもらう努力を払うべきではないかと思う今日この頃である――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
【記事】先発投手の登板間隔の主流は中4日から中5日へ――佐々木朗希の成功を“後押し”するかもしれないMLBのトレンドの変化<SLUGGER>
それぐらい、今年のナ・リーグ新人王レースはレベルが高く、新人王を獲得したポール・スキーンズ(パイレーツ)は23試合、133.0イニングで11勝3敗、防御率1.96。投票2位だった21歳のジャクソン・メリル(パドレス)は、156試合で打率.292(OPS.826)、24本塁打、90打点、16盗塁。20歳のジャクソン・チューリオ(ブルワーズ)も、148試合に出場して、打率.275(OPS.791)、21本塁打、79打点、22盗塁と、いずれも素晴らしい数字を残していた。
「新人王4位だろうが、サイ・ヤング賞5位だろうが、結局はタイトルを取れなかったのだから意味がない」と思う人もいるだろうが、それは違う。
MLBにおける各賞は、選手にとっての履歴書のようなもので、たとえば引退後の選手が語られる時、「◯年の新人賞レースで◯位、サイ・ヤング賞レースで、◯位だった」となるのが常だ。MLBネットワークの「MLB Tonight」に出演した元レッズのショーン・ケイシーが過日、こう語っていた。 「僕は12年もプレーして、オールスターにも3度出場しているけれど、賞にはまったく縁がなかった。でも、MVP投票で票を入れられたことはあるし、票は入らなかったけど殿堂入りの候補にも選ばれた。それだけでもう十分、名誉なことなんだ」
大事なのは、MLBが今永をラスベガスに招待したように、「2024年に活躍した選手」として認知されることなのだと思う。
そういう意味では、5位ながら1票が入った菊池雄星投手や、ほとんどすべての打撃部門で昨年の成績を上回り、(日本ではなじみが薄いだろうけれど)シルバースラッガー賞の外野手部門で最終候補に残った鈴木誠也外野手も同じだ。
我々、日本メディアへの自戒を込めて書くのだけれど、日本の情報番組や、野球関係のYouTuber、あるいはXやインスタグラムなどのSNSが横並びになって「大谷翔平」で盛り上がるのは仕方のないことだけれど、大谷の他にも活躍した日本人選手たちがいるという事実を、MLB主導ではなく自分たちでもっと、広く認知してもらう努力を払うべきではないかと思う今日この頃である――。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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