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【名作シューズ列伝】コビーのナイキ初のシグネチャー「ZOOM KOBE1」の知られざる歴史

西塚克之

2020.02.21

コビーは2006年1月のラプターズ戦、歴代2位の81得点を叩き出した一戦で「ZOOM KOBE1」を着用した。(C)Getty Images

 人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり!

 世の中は、空前のスニーカーブームでありながらシューズBOXについて語られることはほとんどありません。そんな状況にも関わらず、シグネチャーモデルはメーカーのブランドを背負うフラッグシップ。あの手この手で工夫を凝らしたスペシャルBOXで装飾して世の中に投入します。メーカーの意地とプライドが染み込んだシューズBOXを、この場をお借りして紹介させていただきます。

 第1回は「ZOOM KOBE1」。コビー・ブライアントがNIKEに移籍し、最初に開発されたシグネチャーモデル。

 コビーは、1996年のドラフト1巡目13位でシャーロット・ホーネッツに指名。その後レイカーズにトレードされNBAキャリアをスタートさせました。2016年の引退まで20年間レイカーズ一筋でプレーし、NBAチャンピオン5回、シーズンMVP1回、ファイナルMVP2回、オールスターゲーム18年連続出場(NBA記録)、オールスターMVP4回(NBAタイ記録)、1試合81得点など、記録にも記憶にも残る選手として活躍。今年の1月26日に不慮の事故で急逝されるまで、バスケットボールのアイコンとして精力的に活動していました。

 ZOOM KOBE1のBOXは、亡きコビーの追悼という意味も含めご紹介させていただきます。



「ZOOM KOBE1」は、コビーがアディダスからナイキに移籍したことを世間にアピールすべく、メーカーの"本気"が感じられる1足となっています。発売は2006年でしたが、本人は発表まで待ちきれず2005年から着用しており、一部シューズマニアの間で話題になりました。
 
「ZOOM KOBE1」の最も有名な試合は、2006年1月22日のトロント・ラプターズ戦。伝説の81得点ゲームで着用していたのがこの1足で、カラーウェイは白ベースでした。



 画像のUSカラーは2006年に日本で開催された世界選手権(現ワールドカップ)のために用意されたものでしたが、当の本人はヒザの手術のため代表を辞退。世界の舞台でのお披露目はありませんでした。

「ZOOM KOBE1」のBOXは、全体をシルバーでまとめられ、上ぶたには小文字表記の細い書体で「kobe」とデザインされたロゴと、コビーのニックネーム「ブラックマンバ」からインスパイアされたマークがシンプルに配置されています。

 幼少期をイタリアで過ごしたコビーは、同世代のNBAプレーヤーが好んでいたギャングファッションではなく、洗練されたプリミティブなデザインを好んでおり、それがBOXにも反映されています。余談ですが、シューズにスウッシュマークを入れ続けたことも、一貫したコビーの考え方と指向性によるものと言われています。



 注目のポイントは、上ぶたを開いた瞬間です。上ぶた裏に印刷されたコビーの目線は正面。ふたを開けたシューズオーナーと目線が合う仕掛けになっており「VISION FOUCUS WILL HUNGER ENDURANCE」が連続して表記されています。シューズ側の中ぶたは透明フィルム仕様で、シューズを光り輝かせ魅力的に見せるに十分な仕事をしています。

 通常のシューズBOXは、上ぶたと下箱が分離型ですが一体型になっているプロダクトも見所。切れ味があり、しなやかで繊細でありながら力強いコビーのプレーを彷彿させるセンスの高さを感じる一箱です。

 R.I.P. KOBE

文●西塚克之

【著者プロフィール】
西塚"DUKA"克之/日本相撲協会公式キャラクター「ハッキヨイ!せきトリくん」の作者として知られる人気イラストレーター。入手困難なグッズやバッシュを多数所有する収集家でもあり、インスタグラム(@dukas_cafe)では、自身のシューズコレクションを公開中。ダンクシュートでは名作シューズ列伝『SOLE&SOUL』を連載している。

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