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【名作シューズ列伝】バッシュ史に残る名器のモデルは戦闘機。“神様”ジョーダンが30年前に着用した「AIR JORDAN Ⅴ」

西塚克之

2020.08.28

1989-90シーズン、6年目のジョーダンは平均33.6点、2.77スティールをマークし、タイトル王に輝いた。(C)Getty Images

 人に歴史あり。バスケにスーパースターあり。スーパースターにシグネチャーモデルあり。シグネチャーモデルにBOXあり! 

 今回は今から30年前、1989-90シーズンに"神様"マイケル・ジョーダンが着用した「 AIR JORDAN V」のお話です。

 1984年、ジョーダンの記念すべき初代シグネチャー「AIR JORDAN」がリリースされました。同モデルは彼の驚異的なプレーも相まって爆発的なヒットとなりましたが、その後作られた「AIR JORDAN II 」&「AIR JORDAN III」の売り上げはイマイチ。しかし89年、ジョーダンシリーズの存続をかけた「AIR JORDAN IV(以下Ⅳ)」がスマッシュヒットしたことで、バッシュ界の"マスターピース"「AIR JORDAN V(以下Ⅴ)」が誕生することになりました。



 ブラックカルチャーに受け入れられた「IV」の成功を受け、デザイナーのティンカー・ハットフィールドは、「Ⅴ」にさらなる仕掛けを施します。

 モデルにしたのは、戦闘機の「ムスタングP51D」。1945年当時レシプロ(ピストンエンジン)戦闘機として高速で運動性能がありながら、十分な積載量を持ち、長い航続距離と高高度性能を有したアメリカを代表する名機です。
 


「Ⅳ」は、プラパーツやバスケットゴール、ゴールネットをイメージした装飾をすることでジョーダンシリーズを、デコラティブに変身。そしてこの「V」では、ジョーダンのプレースタイルに通じる、空中を支配するスピード感とスパルタンなイメージを付加したのです。

 戦闘機のように空力を意識したシューズのフォルムは、機能美を優先させ、無駄のない滑らかな一体感を作り出すことに成功しました。シューズの前方サイドにあるギザギザ模様は、戦闘機にあるノーズアート「サメの歯」が元になっています。シューホールの形状も、機首にある排気管のようにも見え、ゲームへの闘争心を駆り立てます。

 ビジブルエアはもちろんのこと、サイドのメッシュパネル、アウトソールにクリアパーツを使用することで、最先端のテクノロジーを可視化していることも注目ポイントです。



 今回紹介しているカラーウェイにはありませんが、オリジナルのブラックやホワイトのシュータンにはリフレクター素材が採用されていたり、裏側には「AIR JORDAN」の文字を逆さまに配置することで、当時流行したタンをめくり逆さまにするファッションにも対応しています。