NBAを代表するレジェンドであるアイザイア・トーマス（元デトロイト・ピストンズ）とマイケル・ジョーダン（元シカゴ・ブルズほか）が、現役時代に犬猿の仲だったのは有名な話だ。引退後も両者の溝は埋まらないままのなか、トーマスはジョーダンに対して“謝罪”を要求している。

　２人の確執の始まりは、1985年のオールスターゲームでトーマスが当時ルーキーだったジョーダンにパスをしないように首謀したとされる一件。そこから、ジョーダン擁するブルズはトーマスをリーダーとする“バッドボーイズ”ピストンズの手荒いディフェンス（通称 “ジョーダン・ルール”）の前に、1988年のプレーオフから３年連続で敗れた。その後、1992年のバルセロナ五輪では、ジョーダンがトーマスの“ドリームチーム”入りを拒んだとも言われている。

　そして、近年で“決定打”となったのが、2020年に公開された1997－98シーズンのブルズを追ったドキュメンタリー『ザ・ラストダンス』だ。世界中の注目を集めた作品内で、ジョーダンがトーマスについて「“クソ野郎”という事実は変えられない」と発言したことで、再び舌戦が繰り広げられた。

　トーマスの中では、人口３億3200万人を有するアメリカの全米放送で“クソ野郎”呼ばわりされたことは、いまだに心にモヤがかかっているようだ。元NBA選手のスティーブン・ジャクソンとマット・バーンズがホストを務める人気ポッドキャスト『All The Smoke』に出演した際、「私は正直になってもらいたい人間がいる。言いたいことがあるなら、いかなる時も公の場で言うべきだ」と“謝罪待ち”の姿勢を示した。
  「私は誰とヒザを突き合わせて、腹を割って話すことも問題ない。愛、平和、真実、正直さ、勇気……これらとともに私は生きている。私は正直な人間なんだ。どんな話し合いの場にも就けるし、誰とだって話ができる。しかし、真実を語らない人間もいるんだ。アイツ（ジョーダン）は全国放送で私のことを“クソ野郎”と呼び、そして憎んでいると言った。それが本心でないとするなら、全米放送で謝罪すればいい。心の底からそう思って言ったのなら、もうそのままにしておいてくれて構わない」

　トーマスは、「マジック・ジョンソンとはプライベートな会話は必要なかった」「彼は私が傷つくことがあればハグして『俺が悪かった』と言ってきた」と、現役時代にしのぎを削った好敵手を引き合いに出しながら、ジョーダンに“通すべき筋”を説いている。

「私の甥はジョーダンと住んでいたことがある。私の家族はみんなクールで、ジョーダンを憎むなんてことはなかった。少しリアリティが欲しかっただけだ。私は、今まで全米放送で“クソ野郎”呼ばわりされたことなんてない。彼（ジョーダン）は全米放送でそれをしたんだ。意図してなかったなら、公の場に出てきて潔白を証明すべきだ」

　トーマスとジョーダンの犬猿の仲は、最終的にどのような結末を迎えるのだろうか。

構成●ダンクシュート編集部