感動的な快挙達成の場面に水をさした格好だ。

　現地９月10日、FIBAバスケットボールワールドカップでドイツ代表はセルビアを相手に83―77の快勝。７回目の出場で悲願の初優勝を果たし、チームはもちろん、ドイツのバスケットボールを支えてきたファンや関係者も歓喜を爆発させた。

　だが、ドイツの国内メディアはそのわずか“１分後”に正式発表されたニュースを大々的に報じることとなる。前日にサッカーのドイツ代表が日本代表に１－４の大敗を喫し、批判の矢面に立たされていたハンジ・フリック監督が解任されたのだ。「123年の歴史で初の代表監督更迭」というショッキングなオマケつきである。

　バスケ代表がワールドカップ初制覇の歴史的偉業を成し遂げても、やはりドイツ国内ではサッカーへの関心度のほうがはるかに高い。ましてや代表監督の人事に関する報道であり、お祝いムードが打ち消されてしまった感が強かったようだ。

　ドイツ大衆紙『BILD』は「バスケ界のレジェンドがDFB（ドイツサッカー連盟）に大激怒！」と題した記事を掲載。登場したのはドイツのバスケ代表として221試合に出場したパトリック・フェメルリンク氏（48歳）だ。氏は「率直に感じたのは、ちょっと酷いんじゃないかというところ。スポーツにおける重大な瞬間だったのに、あれではサッカーが話題をさらうのは当然だ」とうなだれ、「バスケットボールが注目されるべきだったのに…。最悪のタイミングでの公表に邪魔されたんだ。ああ、腹が立ったよ」と語気を強めた。
  『BILD』紙は「（ドイツ時間の）午後４時39分、バスケットボール代表がセルビアを破って歓喜の瞬間を迎えた。午後４時40分、DFBがフリックの解任を発表。我がBILDはその１時間前に解任が決定したことを伝えていた」と状況を説明。他メディア『Sport1』は『BILD』紙がそのスクープを放ったために、DFBは当初ワールドカップの試合から少し時間をあけて発表する予定が、早急な判断を迫られたと指摘している。

　さらに『BILD』紙は元バスケ選手でメディアのご意見番であるフランク・ブッシュマン氏のコメントも掲載している。58歳の名物記者は「ドイツのバスケットボール界が選手と一体化し、祝福と感動に震えているときに、DFBはフリックとの決別を明らかにした。彼らは気にも留めないだろうが、私は声を大にして言いたい。なんて情けないんだろう！　なんてクソなことをしてくれたんだ！　正気の沙汰とは思えない」と怒りを滲ませた。

構成●THE DIGEST編集部

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