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NBA

「選手が最もプレーしたいHC」1位の“独裁者”リバース。カリスマ指揮官は名声を不動にできるか【NBA名脇役列伝・後編】

出野哲也

2020.03.13

セルティックスを指揮した2008年には、ピアース、ガーネット、アレンのビッグ3を率いてチームを22年ぶりの頂点に導いた。(C)Getty Images

セルティックスを指揮した2008年には、ピアース、ガーネット、アレンのビッグ3を率いてチームを22年ぶりの頂点に導いた。(C)Getty Images

 この激闘をピークに、ホークスは徐々に戦力を落としていく。リバース自身も1990-91シーズンに自己ベストの平均15.2点、通算アシスト数の球団記録も塗り替えたが、シーズン終了後に3つのドラフト指名権との交換でクリッパーズへトレードされてしまった。

 その翌年、今度はマーク・ジャクソンに代わる司令塔としてニューヨーク・ニックスへ移ったが、1993-94シーズン途中に左ヒザの前十字靱帯を断裂。翌年復帰を果たしたものの、わずか3試合で解雇の憂き目に遭った。

 それでもまだ彼の実力と経験を買うチームは少なくなく、6球団からオファーが届く。「バスケットボールをプレーするのは、勝つことが目的。優勝の可能性があるチームに行きたい」との理由でサンアントニオ・スパーズに加入すると、1995-96シーズンは78試合に出場。控えポイントガードとしてはまずまずの働きを見せたが、このシーズンを最後にユニフォームを脱ぐ決断を下した。
 
 引退後はテレビ解説者に転身するも、「放送席でリラックスしながら仕事を楽しむこともできたけど、プレッシャーと競争の世界に身を置くほうがずっといい」として、1999年にオーランド・マジックのHCに就任。主力選手の離脱が相次ぎ、開幕前は最下位が確実視されていた弱小チームを41勝41敗の勝率5割に導き、就任1年目で最優秀HC賞の栄誉に輝いた。

 2004年にはセルティックスの指揮官に招聘。ケビン・ガーネット、レイ・アレンを獲得してポール・ピアースとのビッグ3を形成した2007-08シーズンに、チームを22年ぶりの優勝へと導いた。

 以前ガーネットは「セルティックスはキューバのようなチーム」と表現したことがある。リバースはフィデル・カストロさながらの独裁者であり、選手の意見は聞くが、それで自分の方針を曲げることはない。にもかかわらず、2012年4月に『スポーツ・イラストレイテッド』誌が実施したアンケートで、「NBA選手たちが最もプレーしたいHC」の第1位に選ばれたのだ。

「選手たちは甘やかされるより、本当のことを言ってくれるコーチを信頼するものだ」とリバースは自信を持って語る。かつて“スポーツ史上最悪のフランチャイズ”と呼ばれたクリッパーズだが、今ではリバースの下にカワイ・レナードやポール・ジョージのようなスターが集まっている。いまだに優勝経験のないこのチームに初めてのチャンピオンリングをもたらした日には、いよいよリバースの名声は不動のものとなるだろう。

文●出野哲也

※『ダンクシュート』2013年9月号掲載原稿に加筆・修正

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