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NBA

「ルールは自分が決める」強烈な個性でNBAを生き抜いたアイバーソンが貫き通した“信念と掟”

北舘洋一郎

2020.04.27

師と仰ぐブラウン(右)との関係について、アイバーソン(左)は「当時のリーグでトップレベルにあった」と振り返る。(C)Getty Images

師と仰ぐブラウン(右)との関係について、アイバーソン(左)は「当時のリーグでトップレベルにあった」と振り返る。(C)Getty Images

 外からどう見えていたかは別として、シクサーズがファイナルに出場するなど隆盛を誇っていた2000年代前半を、アイバーソンはこう振り返る。

「半分のルールは俺が握っていた。残りはコーチ・ブラウン。そのルールの詳細は棺桶まで持っていくつもりだが、俺たちの選手とコーチとしての信頼関係は、当時のリーグでもトップレベルにあったよ」

 一方でブラウンは、自分の長いコーチキャリアのなかで、アイバーソンを特別扱いしていたことについてこう語る。

「私のように古い時代のコーチは、指揮官が頂点に君臨し、選手全員がそれに従った。それは1970年代ぐらいまでの風潮だろう。プロの世界では、いつのまにか若く有能な選手はHCの5、6倍の年俸をもらうようになった。それが色々なことに変化をもたらしたのは事実だ。チームが勝てないのは、選手ではなくコーチのやり方が悪いからだと首を切られるようになったのがいい例だね。しかしこのことが、私がチームバスケットボールを重要視するきっかけとなったのもまた事実。私のコーチキャリアのなかで、アイバーソンの時もチームバスケットボールに徹したからこそファイナルまで辿り着けた。アイバーソンに得点が集中しすぎていたからそうは見えなかったのだろうが、彼の弱点をチームメイトはカバーしたし、彼は自分の長所で仲間をフォローしていた。そういうチームバスケットボールもあるんだ」
 
 パット・ライリー(元ロサンゼルス・レイカーズHCほか)、フィル・ジャクソン(元ブルズHCほか)、グレッグ・ポポビッチ(サンアントニオ・スパーズHC)といったレジェンドコーチと同じように、ブラウンももうひとつ、バスケットボールで重要なことについて言及している。

「選手とコーチ、そして選手同士、これらの相性は重要だ。仲良しであれ、ということではなく、空気感のようなものだね。残念ながらアイバーソンは、シクサーズ以外のチームではいい相性を見つけられなかったようだ。これは意図して生み出せるものではないからね」

 現在のリーグには、アイバーソンのように自分の居場所や縄張りを守ろうとする選手はいない。アメリカの実社会と同じように、時代は大きく変わったのだ。しかし、NBAをスポーツ以上に、アメリカンカルチャーの象徴として観ているファンは、“アイバーソンのように強烈なキャラクターを持つ選手にまた現われてほしい”と強く思っていることだろう。

文●北舘洋一郎

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