スパーズのバスケットボールを、コレは、「歴史上、最も美しいゲームのひとつ」と絶賛する。「私自身もスパーズのスタイルに大きな価値を見出している、それぞれの選手の資質を生かす共同作業としてのバスケットボール。例えるなら、オーケストラが奏でるシンフォニーのようだ」
一方でポポビッチも、フランス代表での経験が、パーカーをより他の選手に気を配れる選手に成長させたと、コレに感謝の思いを伝えたそうだ。
ディーオウも、いかにポポビッチがチームファーストの指揮官だったかを語っている。
「彼はいつも言っていた。『ウチにはレブロン・ジェームズやドゥエイン・ウェイドのような存在はいない。試合に勝てば、それはチームのおかげなんだ』とね」
ポポビッチはティム・ダンカンのようなスーパースターにも、チームの一員としての献身さを求めた。ワイン好きのポポビッチとは、プライベートでも親交があったというディーオウの記憶に鮮明に残っているのは、スパーズで恒例となっている、試合の後の食事会だという。特に試合に負けた後のディナーは、「物事を考えるきっかけになった」と振り返っている。
「ニューヨーク・ニックスとの試合に負けたあと、イタリアンレストランの地下のテーブルの上座に座ったグレッグは、まるでゴッドファーザーのようだった!」
マフィアの親分にしぼられているような、重苦しい食事会の雰囲気が想像できるが、一転、14年の最終戦の後は、ビデオセッションで改善点を指摘したかと思ったら、突然スピーカーからジェームス・ブラウンの「I Feel Good」を流してノリノリで踊り出した、というような、ファンキーな一面もあるのだという。
そして毎日の練習では、ポポビッチは、まず世の中の出来事を話すところから始めるのだそうだ。
「今は間違いなく、ウクライナのことについて話しているはずだ。みんな、彼の考えを知りたいと思う。それこそが彼が偉大な人物である証だ。彼の影響は、次世代のコーチたちにも受け継がれている」
続けてディーオウは、指揮官としてのポポビッチをこう描写している。
「年々変化しているバスケットボールにおいて、一定のスタイルに固執することなく常にゲームの進化を追い、選手たちに適応しながらもある一定のラインは引いて、自分の考え方ややり方、文化を浸透させていく。そのことに継続性を持たせている」
これこそが、何かあればすぐに指揮官の首が据え変えられる現在のスポーツ界において、ひとつの球団で26シーズンという長期政権を築いている、彼の哲学なのだろう。
加えてその人間性。バスケ大国アメリカの指揮官である彼が、国際大会の場で、他国のチームや選手たちに対して見せる敬意や探究心には、いつもこの競技への深い愛情があふれていた。
彼は欧州で開催されるバスケットボール・ウィズアウトボーダーズにも指導者として積極的に携わり、若い才能の発掘にも貢献してきた。
バスケットボール界の良心であり、偉大なる父のような存在である彼が、これからもこの世界に、素晴らしい哲学を注入し続けてくれることを祈って。
文●小川由紀子
一方でポポビッチも、フランス代表での経験が、パーカーをより他の選手に気を配れる選手に成長させたと、コレに感謝の思いを伝えたそうだ。
ディーオウも、いかにポポビッチがチームファーストの指揮官だったかを語っている。
「彼はいつも言っていた。『ウチにはレブロン・ジェームズやドゥエイン・ウェイドのような存在はいない。試合に勝てば、それはチームのおかげなんだ』とね」
ポポビッチはティム・ダンカンのようなスーパースターにも、チームの一員としての献身さを求めた。ワイン好きのポポビッチとは、プライベートでも親交があったというディーオウの記憶に鮮明に残っているのは、スパーズで恒例となっている、試合の後の食事会だという。特に試合に負けた後のディナーは、「物事を考えるきっかけになった」と振り返っている。
「ニューヨーク・ニックスとの試合に負けたあと、イタリアンレストランの地下のテーブルの上座に座ったグレッグは、まるでゴッドファーザーのようだった!」
マフィアの親分にしぼられているような、重苦しい食事会の雰囲気が想像できるが、一転、14年の最終戦の後は、ビデオセッションで改善点を指摘したかと思ったら、突然スピーカーからジェームス・ブラウンの「I Feel Good」を流してノリノリで踊り出した、というような、ファンキーな一面もあるのだという。
そして毎日の練習では、ポポビッチは、まず世の中の出来事を話すところから始めるのだそうだ。
「今は間違いなく、ウクライナのことについて話しているはずだ。みんな、彼の考えを知りたいと思う。それこそが彼が偉大な人物である証だ。彼の影響は、次世代のコーチたちにも受け継がれている」
続けてディーオウは、指揮官としてのポポビッチをこう描写している。
「年々変化しているバスケットボールにおいて、一定のスタイルに固執することなく常にゲームの進化を追い、選手たちに適応しながらもある一定のラインは引いて、自分の考え方ややり方、文化を浸透させていく。そのことに継続性を持たせている」
これこそが、何かあればすぐに指揮官の首が据え変えられる現在のスポーツ界において、ひとつの球団で26シーズンという長期政権を築いている、彼の哲学なのだろう。
加えてその人間性。バスケ大国アメリカの指揮官である彼が、国際大会の場で、他国のチームや選手たちに対して見せる敬意や探究心には、いつもこの競技への深い愛情があふれていた。
彼は欧州で開催されるバスケットボール・ウィズアウトボーダーズにも指導者として積極的に携わり、若い才能の発掘にも貢献してきた。
バスケットボール界の良心であり、偉大なる父のような存在である彼が、これからもこの世界に、素晴らしい哲学を注入し続けてくれることを祈って。
文●小川由紀子