専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

スターの座から犯罪者へ……。慢心、嫉妬、不摂生により転がり落ちたケンプの悲しきキャリア【レジェンド列伝・後編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2022.07.22

 こうした態度は、当然ながらチームの内外から批判を浴びた。「あれほど才能のあるヤツならグダグダ言ってないで、プレーで自分の真価を見せつけるべきだ」とのチャールズ・バークレー(元フェニックス・サンズほか)の言葉も、ケンプの耳には届かなかった。開幕後も不満を抱えながらのプレーに終始し、練習や移動の飛行機に何度も遅刻してチームの和を乱した。ファイナルでの大活躍からわずか1年後、ケンプは石もて追われるがごとくクリーブランド・キャバリアーズへ放出された。

 キャブズ移籍後もしばらくは活躍したが、やがてコンディション調整を怠るようになる。 ブクブクと太りだしてプレーにキレが失われ、 故障も頻発するようになった。 アルコールや麻薬に浸かって、私生活でも山のような問題を抱え込む。ポートランド・トレイルブレイザーズとオーランド・マジックで過ごした最後の3年間は平均得点が6点台にまで下降し、30歳代前半の若さで寂しくリーグから消えていった。40歳近くなった時にイタリアのリーグでのカムバックを志したこともあったが、1試合も出ることなく帰国。引退後は麻薬と拳銃の不法所持で、3度にわたって逮捕されてもいる。
 
「俺は他人を信じない。有名になってから近づいてきた連中は特にだ。人に心を開いたら、それだけ傷つけられることも増えるんだ」

 これは選手として絶頂期にあった頃のケンプの発言である。学生時代から持ち上げられては落とされることが繰り返されるうち、彼の心はいつしか荒み、その後の転落を招いてしまったのだろう。

 ケンプは大変な子ども好きで、新人の頃から恵まれない環境にある子どもたちへの慈善活動に取り組んでいた。そんな心優しき一面を持っていた男が、このような人生を送ることになってしまったのは残念と言うしかない。

文●出野哲也
※『ダンクシュート』2009年5月号原稿に加筆・修正

【PHOTO】オラジュワン、ジョーダン、バークレー、ペニー……NBAの歴史を彩った偉大なレジェンド特集!
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号