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八村塁の活躍がテレビで見られないのはなぜ?変わりゆくスポーツ放送ビジネスの舞台裏

石田英恒

2019.11.30

 動画を買う場合の料金は、1990年代に在京6局が協定して、1秒単位で1600円という値段に決められた。ケース・バイ・ケースで値段はさまざまというが、基本的に、この金額がベースになっていて、現在は、もう少し高くなり1秒1600円~2500円程度になっていると思われる。もし、2500円として、30秒の動画を買えば7万5000円になる。しかし、スポーツニュースは繰り返し流されるため、これが積み重なっていくと大きな金額になってしまう。

 一方で、テレビのニュースでユーチューブなどの動画を使う場合は、1600円より安い値段に設定されているという。

 しかし、今回の楽天のケースのように、動画配信サービス事業者が高い放送権料のスポーツ放送権を持つようになり、これまでの慣例から外れる事態が出てきたため、テレビ局側は、そこから買わないようにしているとみられる。

 映像はなくても結果だけ伝えればいい。

 その背景には、視聴率の下落や広告収入の落ち込みで、テレビ局が収入減になっている事情がある。そのため、テレビ局は、なるべく経費を抑えざるを得なくなっているのだ。
 
 例えば、日本よりも進んだテレビビジネスが展開されている米国では、国民的スポーツイベントで毎回高視聴率を叩き出すNFLの優勝決定戦「スーパーボウル」は1局の中継。スーパーボウルは、高額な放送権料のため、毎年中継局が変わり、2018年はNBC、2019年はCBS、2020年はFOXが放送権を持っている。残りの局はニュースでダイジェスト映像を流すこともなく、基本的に結果(スコア)を伝えるだけだ。

 1局で、すべてのスポーツを網羅するのではなく、自局が購入した放送権のスポーツを中心に放送し、残りは結果だけ伝えればいい、という考え方だ。動画配信サービス事業者が参入した日本のテレビ界も、今後は、アメリカ的になっていくと推察される。

 今回の出来事で、日本でも米国のテレビ界を見習おうとする動きが見られるという。

 昔のように家族みんなでスポーツ中継を楽しむ時代ではなくなり、パソコンやスマホで、1人でスポーツを見る時代になりつつある。日本のテレビ局は、この新しい時代に対応しようとしているが、現実的には厳しい状況だ。得意なスポーツ分野に特化して視聴者と向き合っていかなければ、明るい展望は開けないのかもしれない。

取材・文●石田英恒(フリーライター)
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