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NBA

アービングとトーマス――のちにトレード相手となる2人が1位と最下位で指名された2011年【NBAドラフト史】

大井成義

2019.11.29

キャブズは、カレッジで11試合しか出場していない1年生を1位で指名。アービングはその期待に応え、2016年に主軸としてチームを初優勝に導いた(C)Getty Images

キャブズは、カレッジで11試合しか出場していない1年生を1位で指名。アービングはその期待に応え、2016年に主軸としてチームを初優勝に導いた(C)Getty Images

 2011年ドラフトで1位指名されたカイリー・アービングと、最下位指名のアイザイア・トーマス。この2人が、のちにトレードで交換されることになるとは誰が予想しただろうか。両者の他にも多くの実力派を生んだ、この年のドラフトを振り返る。

■闘病中のオーナーの息子ニックがキャブズに1位指名権をもたらす

 2011年のNBAドラフトにまつわる興味深い動画が、『YouTube』に何本かアップされている。ひとつはNBAが制作した5分弱の短い動画で、ドラフト本番中にカイリー・アービングの姿を至近距離から追ったもの。タイトルは“1巡目指名発表前に緊張するカイリー・アービング”。テレビ中継では流れることのない珍しいシーンや、リアルな音声も記録され、臨場感溢れる内容となっている。

 そして、すこぶる興味深い動画がもうひとつ。タイトルは“トロント・ラプターズ:2011年NBAドラフトの舞台裏”。ラプターズが2011年に制作した48分の動画だ。GM兼球団社長のブライアン・コランジェロを中心に、2011年ドラフトにおけるラプターズ首脳陣とドラフト候補選手のストーリーを仔細に描いており、ドキュメンタリーとしても秀逸な作品である。

 それらの動画で描かれている事象や証言を参考にしつつ、様々なメディアから得た情報を再検証し、2011年のNBAドラフトを振り返ってみたい。
 
 2010-11シーズンは、最下位が17勝65敗のウルブズ、ブービーに19勝63敗のキャブズ、22勝60敗のラプターズと続いた。通常であればプレーオフ進出を逃した14チームがロッタリーに参加するのだが、この年はクリッパーズの指名権がキャブズへ、ネッツの指名権がジャズに移行したため、キャブズとジャズは2つずつ指名権を持つことになり、参加チーム数も12に減っている。

 5月17日、ニュージャージー州セコーカスにあるNBAの施設でロッタリーは行なわれた。この日最も注目を集めた登壇者は、キャブズ代表のニック・ギルバート(当時14歳)。オーナーのダン・ギルバートの息子である。脳に神経線維腫症という難病を抱えて生まれ、数度の手術を乗り越え、化学療法を受けながら生きるニックは、ダンにとって我が子ながらヒーローだった。

 進行役を務めたESPNのヘザー・コックスが、登壇者の紹介時に「お父さんがあなたをヒーローだと言ってるけど、どう感じる?」とニックに話を振ると、「What’s not to like.(気に入らないわけないよ)」と素っ気なく答え、会場は笑いの渦に包まれた。そのクールな返答は一部で話題となり、Tシャツにプリントされるなど、キャブズの販促活動に使用されることになる。
 

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