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NBA

NBAが注目する欧州の逸材!16歳でプロデビューを飾ったキリアン・ヘイズの興味深いキャリア

小川由紀子

2019.12.25

同じサウスポーのコンボガードとして、ジェームズ・ハーデンに影響を受けていると語る。(C)Getty Images

同じサウスポーのコンボガードとして、ジェームズ・ハーデンに影響を受けていると語る。(C)Getty Images

 順風満帆に見えたキャリア序盤。しかし彼が目標としていたのは、アメリカのカレッジに進学して、NCAAでプレーすることだった。ところが父のデロンは、フランスに残ってプロとしてキャリアを積むことが彼の成長にとって最善の道であると息子を説得。キリアンは父のアドバイスを信頼し、アメリカのカレッジを経由せずにドラフトにエントリーする道を選択した。

 それでも、時機を見てはアメリカに渡り、サマーキャンプなどに参加することで、彼にはアメリカのバスケ文化も着実に刻まれていった。2017年、15歳の時には“高校生のオールスター”とも言われる『ジョーダン・ブランド・クラシック』のインターナショナル部門に招待され、13得点、7アシスト、5リバウンド、5スティールをあげてMVPに選出。翌年には、ロサンゼルスで開催されたNBAの育成キャンプ「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ」に招かれるなど、バスケ界からの注目度も次第に増していった。

 その間、フランス代表の一員として参戦したU16欧州選手権では、スターターとして金メダル獲得に貢献。平均16.6点、7.0リバウンド、5.1アシストで大会MVPに輝くと、翌年のU17ワールドカップでもフランスの決勝進出の立役者となった。この大会はアメリカに敗れて準優勝に終わったが、2021年世代の最注目プレーヤーの1人であるジェイレン・グリーンらとともに大会ベストチームに選ばれている。
 
 そして今季、ヘイズは次のステップに踏み出した。より実戦経験を充実させるべく、ドイツのラティオファームに移籍。ユーロリーグのひとつ下のカテゴリーであるユーロカップにも参戦し、国際マッチで腕を磨いている。ユーロカップでは今季グループ最下位と苦戦中だが、自身は全10試合に先発して平均12.8点、6.2アシストという活躍で、着々とNBA入りの準備を進めている。

 コートビジョンに優れるヘイズは、ドリブルで相手ディフェンスを切り裂き、仲間に的確なパスを捌くタイプのコンボガード。ボールハンドリングも巧みで守備意識も高い。196cm、98kgの体躯を誇り、当たり負けしない強さも備えている。影響を受けているという同じ左利きのジェームズ・ハーデンには、シューティングに関してはまだ遠く及ばないものの、独特のリズム感やクロスオーバーなどはNBA最高のスコアラーを彷彿とさせる部分もある。

 そして彼の強みはなんといっても、そのハイブリッドさだ。アメリカ人プロ選手を父に持ち、欧州のクラブですでにプロを経験。完成度という点では大きく異なるが、ユーロリーグで揉まれたルカ・ドンチッチがNBAで目覚ましい活躍を見せていることは、早くからプロ経験を積むことの利点を象徴している。

「コートの上では、アメリカとフランス、両国のバスケのベストな部分を表現したい」と意気込むヘイズ。“NCAA未経験、アメリカ生まれのフランス人選手”という特殊な肩書きを持った逸材は、2020年ドラフトの注目株になることだろう。

文●小川由紀子
 
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