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NBA

ブーイングから始まった苦難のNBAキャリア。トレード、大けがを経てポルジンギスが辿り着いた境地<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2024.06.16

 そう感謝するポルジンギスはその後、マーベリックス、ワシントン・ウィザーズを経て、現在のセルティックスに至るが、彼は移籍後も試合でマディソンスクエア・ガーデンに参上するたびに、ニックスファンからブーイングを浴び続けている。

 セルティックスの一員として足を踏み入れた今季の初戦は、いつも以上に“Fワード”のチャントで歓迎(?)を受けたが、試合ではニックスの誰よりも多い30得点を叩き出す活躍で勝利の立役者となった。

「観客は確かに唱っていたね。でも僕にとっては楽しかった。それをモチベーションとして戦った。こうした環境に身を置くのは、実のところ本当に楽しいんだ」とポルジンギスは手荒な歓迎について試合後に話している。

 実際のところはニックスファンの間でも愛憎相半ばのようで、チームを去ってからメキメキと活躍している彼の姿に、「辛くて見られない」「今さらだが戻ってきてほしい」「本当はトレードされてほしくなかった」という思いを抱いている人もいるようだ。

 そうしたファンとの関係性に加え、2018-19シーズンを全休することになった左ヒザの前十字靭帯断裂や20年の半月板の手術など、彼のキャリアは大きなケガと隣り合わせでもある。

 2018年には、そのヒザの故障のおかげで、せっかく選出された初のオールスターの欠場を余儀なくされ、昨年、ラトビア代表が5位と大躍進したワールドカップも、足底腱膜炎のため回避せざるを得なかった。
 
 そして今回も、右ふくらはぎの故障によりプレーオフ序盤に離脱。1か月以上戦列から遠ざかり、ファイナル出場も危ぶまれたが、なんとかコンディション調整を間に合わせると、ジョー・マズーラHCはシックスマンという、通常とは異なる役割をポルジンギスに託した。そして冒頭の通り、初戦勝利の旗振り役となったのだった。

「このチームに来た初日から、自分は『勝利のために必要なことは何でもする』と誓った。今日のこの状況は、まさにその言葉通りだ。ベンチスタートは普段の役割とは違う。でもそんなことはどうでもよかった。そのための準備はできていたし、それを実行したまでだ」

 第1戦後のポルジンギスのコメントからは、充実感が滲んでいた。先述の『ニューヨーク・ポスト』のインタビューでは、こうも語っている。

「(ニックス入団当時)自分は世界に挑もうとしていた世間知らずの子どもだった。あのくらいの歳だったら、それもあり得ることだと思う。でも、今の自分は成熟して、考え方も違う。そして今、チャンピオンタイトルを賭けて大舞台でプレーするという、キャリアの最初から望んでいたことを実現するパーフェクトな状況にいる。大事なのはそれだけだ」

 第3戦と4戦では、2021-22シーズンの途中にマブズからトレードされて以来初めて、古巣ダラスのアメリカンエアラインズ・センターでプレーするはずだったが、第2戦の第3クォーターで痛めた左足の負傷により、またも戦線離脱となった。

 今後は1日ごとに回復状況を見極めていくとのことだが、優勝に王手をかけた第5戦で復帰なるか、そして、ブーイングで始まった彼のNBAキャリアが栄光の頂点に到達するかを見守りたい。

文●小川由紀子

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