専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
NBA

「彼はカメレオンだ」欧州で6か国7クラブを渡り歩き、NBAの優勝請負人となったPJ・タッカーの“這い上がり”の歴史<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.05.20

 とりわけ彼に大きな影響を与えたのは、ドイツのブローゼ・バスケットで指導を受けたクリス・フレミングHCだった。現在シカゴ・ブルズでアシスタントコーチを務めるフレミングは、入団後すぐに当時26歳のタッカーをリーダーに任命した。

「クリスの下で、自分は真のリーダーになるとはどういうことかを学んだ。コート上で常に最高のパフォーマンスを発揮するだけでなく、チームメイト1人ひとりと最高の関係を築くこと。それが今、NBAで役立っている。ここでの経験は、リーダーとしての役割を果たすことを身につける上で、本当に役立った」

 2012年の夏、サマーリーグを経てフェニックス・サンズとの契約を勝ち得たタッカーは、ここでNBAに定着。その後は古巣ラプターズを経て、ロケッツではカンファレンス・ファイナルを経験、そして昨季はバックスでタイトル獲得した。今季もヒートの不動のスターターとして戦う、今や優勝請負人的存在だ。

 スポールストラHCはこんなコメントをしている。
 
「私は、PJ・タッカーのハイライト映像を作って、毎年ルーキーオリエンテーションで見せるべきだと思うほどだ。10代の若い選手たちは、自分なりのビジョンを持っているし、NBAに入るとはどういうことかを教えられるが、それはたいてい数字や、いかに認められるか、何点取れるか、何本シュートを打てるかということだ。

 しかし現実的にNBAでプレーすることとは、体力を消耗し、目には見えない泥仕事をこなし、それに満足できるかということなんだ。タック(タッカー)はそのすべてを備えている。彼は我々にぴったりだ。我々は彼の仕事を敬愛している。それは勝利に直結するものであり、それが最も重要なことなのだ」

 タッカー自身も、この言葉に共鳴するように自らの仕事に誇りを持っている。

「ビッグプレーが成功する裏には、たくさんの細かいプレーがある。それらがあってようやくビッグプレーが実現するんだ。自分はそういう、誰からも称賛されないような小さいファインプレーに絡むのが好きなのさ」

 しかしチームメイトは、彼のそんな小さなファインプレーを見過ごしてはいない。ヴィクター・オラディポは「彼は完全なチームプレイヤー。勝利のためにはどんなことだってやってくれる。そんな選手はそうそういるものじゃない。彼が味方の選手で本当によかったよ」と語っている。

 そんな仲間からの言葉こそが、タッカーにとっては何よりの賛辞に違いない。今後のプレーオフでも、存分にハッスルプレーを見せてくれることだろう。

文●小川由紀子

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号