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NBA

“凡庸なNBA選手”から“欧州トッププレーヤー”へと変貌を遂げた男。次なる野望はトルコ代表での東京五輪出場

小川由紀子

2020.01.22

自身を生かしてくれるアタマンHC(右)に出会い、エフェス加入後の2年間は目覚ましい活躍を見せている。(C)Getty Images

自身を生かしてくれるアタマンHC(右)に出会い、エフェス加入後の2年間は目覚ましい活躍を見せている。(C)Getty Images

 ラーキンがユーロリーグの得点記録を塗り替えたバイエルン戦の第4クォーター残り4分。38得点をあげ歴代タイ記録まであと3ポイントに迫ったところで、アタマンHCはラーキンを1度ベンチへと下げた。記録更新がちらついてミスショットが増えていた彼の頭をいったん冷やしたほうがいい、そう判断しての采配だった。

 ラーキンは「今は水なんか飲んで休憩している場合じゃない!戻してくれ!」と食い下がった。しかし指揮官は「大丈夫だから、ここはいったん落ち着きなさい。その方がきっといい」となだめ、鼻息荒いエースを約1分間ベンチに座らせコートに送り出した。

 すると、残り3分間でラーキンは3ポイント3本と2ポイント1本、計4本打ったシュートをすべて成功。一気に11点を積み上げて計49得点と、これまでの記録を8点も更新してその試合を終えた。ラーキンもその後、「あの時のHCの判断は正しかった」と尊敬を込めて語っている。

 チームには元NBAプレーヤーのロドリーグ・ボーボワや、ラーキンと同時期に入団したセルビア人ガード、ヴァシリエ・ミチッチら好タレントが揃っている。「彼はここのチームメイトやプレーのシステムがやりやすいと感じている」とアタマンHCが語るように、ラーキンにとってエフェスは、仲間と相互に高め合っていける理想的な環境でもあったのだ。
 
『beINスポーツ』のインタビューでラーキンは、「勝利を重ね、ファンに応援してもらい、今はここ(トルコ)をより自分の居場所のように感じている。自分のキャリアで、2シーズンプレーしたチームはここが初めてだ。なので特別なものを感じている」と話している。

 そんなラーキンに現在浮上しているのが、トルコ代表入りの話だ。同国のバスケットボール連盟会長を務める元NBAスター、ヒドゥ・ターコルーは、トルコリーグのオールスター期間中の1月18日にラーキンと話し合いをもったことを認め、一両日中にラーキンのトルコ代表入りが発表されるかもしれないと現地メディアにコメントした。

「トルコ代表からオファーが来たらそれは素晴らしいことだ。トルコ代表のユニフォームも自分に似合いそうだしね」

 そう本人もインタビューで答えており、帰化選手として同国代表入りを果たす可能性は高そうだ。まだ東京五輪の出場権を獲得していないトルコは、今年6月にカナダで行なわれる世界最終予選での切符獲得を目指す。ここでウルグアイ、チェコ、ギリシャ、中国、カナダとたった1つの席を争うことになる。

 ラーキンの加入は、トルコ代表にとって間違いなく大きなプラスになるだろう。白と赤のトルコ代表ジャージを着た彼の姿を、この夏、東京で見ることができるかもしれない。NBAから巣立ち、欧州ベストプレーヤーへと成長した27歳の前には、無限の世界が広がっている。

文●小川由紀子
 

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