海外サッカー

「雪崩を打つように広がる恐れがあった」 UEFAがラ・リーガとセリエAの国外開催を「例外的」に承認した経緯や理由を英紙が解説

THE DIGEST編集部

2025.10.08

12月に行なわれる17節「ビジャレアル対バルセロナ」はアメリカで開催される予定だ。(C)Getty Images

 国内のコンペティションの試合はその国で開催されるのが当然と思われるが、現実にはアメリカのMLBが日本や韓国で開幕戦を迎えたり、欧州サッカーでも強豪国のクラブは国内カップ戦決勝を戦うために東アジアや中東まで足を伸ばしたりしている。

 人気チームがこうした遠征を行なう件については、今や市場開拓などの目的から仕方がないと受け入れる考えもある一方で、やはりそれぞれの国の中で開催されるべきであるという声も当然ながら多い。そしてカップ戦については譲歩するも、国内リーグ戦の海外開催は絶対に受け入れられないという人々は、これまでにもこうしたアイデアが浮上しては、それを拒絶してきた。

 しかしこのたび、UEFA(欧州サッカー連盟)は、今冬にラ・リーガのバルセロナ対ビジャレアル戦を12月にアメリカのマイアミで、セリエAのミラン対コモ戦を来年2月にオーストラリアのパースで、それぞれ開催を承認。これにより、欧州の国内リーグ戦が史上初めて別の大陸で行なわれる。
 
 この歴史的決定について、UEFAはこれが「同様の事例を次々と生む前例」になるものではないと強調。「我々も基本的には国内リーグ戦を本国以外で開催するアイデアには明確には反対だ。しかしながら、現在見直し中のFIFA(国際サッカー連盟)の規定が十分に明確かつ詳細ではないため、我々の執行委員会は『例外的な措置』として、今回の2件の要請に対して承認するという、非常に不本意な決定を下した」との声明を発表した。

 またUEFAのアレクサンデル・チェフェリン会長も、「リーグ戦はそれぞれの自国で行なわれるべきだ。それ以外の開催は、忠実にスタジアムに足を運ぶファンを疎外し、競技の公正さを損なう要因となり得る。我々の協議でも、この懸念が広く共有されている。我々の立場は明確だ。国内リーグの一体性を守り、サッカーが本来の土壌に根付いた存在であり続けると保証する」と語っている。

 ラ・リーガ、セリエAによって、今回の海外開催のアイデアが出されて以降、欧州のサポーター団体は「クラブのルーツを奪う」「クラブを伝統やコミュニティーから切り離された娯楽商品へと貶める」といった理由から、これに猛反対する意思を示し、UEFAに対しては協議の場を設ける機会を要請していたという。
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国外開催を防ぐための明確な規則作りは実際には進んでいない