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運じゃない!? 日本でも話題となったPK戦でオランダの取り組んだ秘策。バレー界の名将を招聘してGKを改革「コツがある」【W杯】

THE DIGEST編集部

2022.12.09

あらゆる分野に見識があるファン・ハール。フットボール界で数多の勝利を経験してきた名将は、チームを勝たせるために努力を怠らない。(C)Getty Images

 PKは運なのかどうか。去る12月5日に行なわれたカタール・ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で、日本代表がPK戦の末にクロアチア代表に敗れたあと、SNSを中心に議論は白熱した。

 森保一監督が「PK戦は準備の仕方が足りなかった」「私が全て決めた方が選手にとっても良かったのかなと思います」と振り返ったように、選手たちの挙手制によって決したキッカーたちは、4人中3人がシュートを失敗。相手守護神ドミニク・リバコビッチにことごとく阻まれてしまった。

 クロアチアに大差をつけられて、遅れをとったために、日本のPKの"やり方"について議論が勃発。「蹴った選手たちの勇気に拍手を送りたい」と選手たちの精神力を称えた声が相次いだ一方で、「データを元にPKに臨まなければいけない。PKは運要素だけで片付けられるほど単純では無い」といった指摘も飛んだ。

 では、各国はどうなのか。興味深いのは智将ルイス・ファン・ハールが率いるオランダだ。彼らは「PKが運だけではない」と裏付けるような取り組みをしている。というのも、バレーボール界の名将をコーチングスタッフとして招き入れ、主にGKに対する戦術を深めているのだ。

 オランダは、国際大会における7度のPK戦のうち5回で敗北。「接戦ほど弱い国」というレッテルを貼られてきた。そうしたなかで百戦錬磨のファン・ハールが今年9月に招聘したのが、国内のバレーボール界で名将として名を馳せたピーター・マーフィー氏だった。

 国際バレーボール連盟の殿堂入りも果たしているマーフィー氏は、科学的アプローチに基づいた指導に定評のあるプロフェッショナルだ。2010年からは監督やコーチ向けに情報を提供するなどサッカー界にも造詣が深く、フランク・デ・ブールやエリク・テン・ハグらがその影響を受けてきた。
 
 御年75歳になる伝説的な指導者は、9月の就任以降にフランス・フックGKコーチとともに、科学的根拠に基づいたPKの戦術的なトレーニングを6人のGKに実施。今大会に選出された3人(レムコ・パスフェール、ユスティン・バイロウ、アンドリース・ノペルト)は、国際的な実績こそ多くはなかったが、訓練の過程でよりよい結果を残した人材だったという。

 マーフィー氏を「彼のもとでならペナルティーキラーは生まれる」と高評するファン・ハールは英紙『Mirror』の取材で、「我々にとっては最高の指導者だと思う。PKを蹴る相手に揺さぶりをかけ、安心感を失わせる方法を伝える。そのためのコツがあるんだ」とし、次のように論じている。

「相手に影響を与えることは可能だと思っているし、ピーターはとくにゴールキーパーたちの心理面で心強い存在となるだろう。彼はこの分野を大学でも深く研究していた人物だからね。科学的なアプローチで見出した技術をゴールキーパーに提供していく。これこそイノベーションと呼ぶべきことだ」

 PKは運ではなく、戦術と技術、そして精神力がモノを言う――。もしも、現地時間12月9日に行なわれるアルゼンチン代表との準々決勝がPK戦に突入すれば、オランダはそれを世界に証明するかもしれない。

構成●THE DIGEST編集部

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