どんな選手にとっても、自分を成長へ導いてくれる指導者との出会いは極めて貴重になる。無論、相性やタイミングというのも関わってくるが、いずれにしても、選手としてだけでなく1人の人間として新たな気づきや考え方を与えてくれる指導者に巡り合いができたのなら、それは人生においても間違いなく大きな財産となる。
元日本代表MFで、ジェフ市原(現在のジェフ市原・千葉)やFC東京などで長年プロとして活躍した羽生直剛にとって、2022年5月1日に80歳で他界したイビチャ・オシム監督とは、感謝してもしきれないほどのものをもたらしてくれた、まさしく“恩師”だ。
指導者としてのオシムは世界的な名将だった。ユーゴスラビア代表を率いた1990年のイタリア・ワールドカップではベスト8進出に導く手腕を発揮。さらにオーストリアの名門シュトゥルム・グラーツでは2度の国内リーグ制覇と3度のカップ戦優勝を果たし、チャンピオンズ・リーグにも3度も出場している。
そんなオシムがジェフ市原の指揮官となったのが03年。羽生はまだプロ2年目だった。
チームはボスニア・ヘルツェゴビナ人指揮官に導かれ、瞬く間に成長を遂げた。03シーズンの1stステージで3位、2stステージでは2位といずれも上位に食い込んでいきなり優勝争いを展開。さらに05年にはヤマザキナビスコカップで優勝し、クラブ史上初となるタイトルを掴んだ。
思慮深く、物事の本質を鋭く突いた言葉の数々と、いかなる時も妥協せずにチャレンジをし続ける姿勢、そして多種多様にアレンジして行なわれたトレーニングメソッド。後に日本代表監督も務めたオシムに多大な影響を受けた選手・指導者は、数えきれないほどいるだろう。
では、オシムの持つ真の素晴らしさとは何か。彼が日本サッカーにもたらした本質的な変化はどこにあるのだろう?
背景や意図を正しく理解しないまま、「オシムの言葉」、あるいは「オシム語録」というものが、独り歩きしてしまうのはあまりにもったいないし、寂しい話だ。
羽生もそこに同意する。
「例えばですが、オシムさんの代名詞的なトレーニングとしてフルコートでの3対3というのがありました。普通はそんな広いピッチで3対3の練習なんてしないから、インパクトは強かったと思います。ただですね、その背景にあるメッセージを理解しないままに、『こういうことをオシムさんもやってたんでしょ』と言って実践しても、それってただのフィジカルトレーニングでしかないんですよ。
オシムさんって実は明確にトレーニングの中で崩し方とかのヒントを教えてくれるんです。疲れている状況だけど、『お前がもうちょっと斜めにこう入ってこい』とか、『この状況を見たら、お前はどこへいけるのか』『そこでこうなったら、DFがこうなるだろう』みたいなのを言われるんです。
試合の残り何分かで、こうしたカウンターチャンスを作れたときに、『お前ら、その状況で何ができるんだ?』ってところで、『1人がドリブルで抜きにかかって、逆に取られてしまった!』じゃなくて、『他の2人がどうやって入ってくるのか?』『そう動けたら、ここが空くよな?』みたいなのを教えてくれていたと思っています。
フルコートでの3対3を何のためにやるのか。ただ『きついよな』っていう話で終わってしまうのか。いや、実はそうやってサッカーのやり方を教えてるんですよって言える指導者なのか。そこで全く変わってくるなっていうのが僕の解釈であります」
元日本代表MFで、ジェフ市原(現在のジェフ市原・千葉)やFC東京などで長年プロとして活躍した羽生直剛にとって、2022年5月1日に80歳で他界したイビチャ・オシム監督とは、感謝してもしきれないほどのものをもたらしてくれた、まさしく“恩師”だ。
指導者としてのオシムは世界的な名将だった。ユーゴスラビア代表を率いた1990年のイタリア・ワールドカップではベスト8進出に導く手腕を発揮。さらにオーストリアの名門シュトゥルム・グラーツでは2度の国内リーグ制覇と3度のカップ戦優勝を果たし、チャンピオンズ・リーグにも3度も出場している。
そんなオシムがジェフ市原の指揮官となったのが03年。羽生はまだプロ2年目だった。
チームはボスニア・ヘルツェゴビナ人指揮官に導かれ、瞬く間に成長を遂げた。03シーズンの1stステージで3位、2stステージでは2位といずれも上位に食い込んでいきなり優勝争いを展開。さらに05年にはヤマザキナビスコカップで優勝し、クラブ史上初となるタイトルを掴んだ。
思慮深く、物事の本質を鋭く突いた言葉の数々と、いかなる時も妥協せずにチャレンジをし続ける姿勢、そして多種多様にアレンジして行なわれたトレーニングメソッド。後に日本代表監督も務めたオシムに多大な影響を受けた選手・指導者は、数えきれないほどいるだろう。
では、オシムの持つ真の素晴らしさとは何か。彼が日本サッカーにもたらした本質的な変化はどこにあるのだろう?
背景や意図を正しく理解しないまま、「オシムの言葉」、あるいは「オシム語録」というものが、独り歩きしてしまうのはあまりにもったいないし、寂しい話だ。
羽生もそこに同意する。
「例えばですが、オシムさんの代名詞的なトレーニングとしてフルコートでの3対3というのがありました。普通はそんな広いピッチで3対3の練習なんてしないから、インパクトは強かったと思います。ただですね、その背景にあるメッセージを理解しないままに、『こういうことをオシムさんもやってたんでしょ』と言って実践しても、それってただのフィジカルトレーニングでしかないんですよ。
オシムさんって実は明確にトレーニングの中で崩し方とかのヒントを教えてくれるんです。疲れている状況だけど、『お前がもうちょっと斜めにこう入ってこい』とか、『この状況を見たら、お前はどこへいけるのか』『そこでこうなったら、DFがこうなるだろう』みたいなのを言われるんです。
試合の残り何分かで、こうしたカウンターチャンスを作れたときに、『お前ら、その状況で何ができるんだ?』ってところで、『1人がドリブルで抜きにかかって、逆に取られてしまった!』じゃなくて、『他の2人がどうやって入ってくるのか?』『そう動けたら、ここが空くよな?』みたいなのを教えてくれていたと思っています。
フルコートでの3対3を何のためにやるのか。ただ『きついよな』っていう話で終わってしまうのか。いや、実はそうやってサッカーのやり方を教えてるんですよって言える指導者なのか。そこで全く変わってくるなっていうのが僕の解釈であります」
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