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“愛されキャラ”久保建英の怒りのセレブレーションに現地メディアは理解示す「タケのようなクラックは常にピッチに立ち続けなければならない」

下村正幸

2024.08.27

スタメンから外れた久保だったが、後半途中から出場し、決勝点を奪ってみせた。(C)Getty Images

 スペイン紙『AS』のレアル・ソシエダ番記者、ロベルト・ラマホ氏が「話題の尽きない選手」と評する久保建英が、その"本領"を発揮した。

 ラ・リーガ第2節のエスパニョール戦で、途中出場から決勝ゴールを決めた久保は、不機嫌な表情のまま祝福に駆け寄ってきたチームメイトとのハグを拒否し、ユニホームの背中の名前を誇示するという風変わりなゴールパフォーマンスを見せたのだ。

 この出来事は、ポレミカ(論争)が大好物のスペインメディアにとっては格好のネタとなった。久保がこうした行動に至った理由については、本人が無言のままスタジアムを去ってしまったため推測になるが、おそらく「スタメン落ち」が原因だろう。

 試合後、マルティン・スビメンディは「自分がスタメンではないと知った時、タケが顔をしかめたのを見た。でもその後、彼は本来あるべき姿でピッチに出て、ゴールを決めて僕たち全員を黙らせた」と語った。一方でイマノル・アルグアシル監督は、「ユニホームの名前を誇示して誰かにゴールを捧げていたのかもしれない」と煙に巻いた。

 ソシエダは開幕節、ホームでラージョ・バジェカーノに1-2で敗れた。ミッドウィーク開催となる第3節は中3日でホームにアラベスを迎えて行なわれるが、不動のレギュラーがシーズンのこの段階でスタメンから外されるのは、異例の事態だ。捉え方によっては、(開幕戦の)敗北の責任を取らされている印象すら与えかねない。

 確かに昨シーズンの後半戦、久保のパフォーマンスが落ちたのは誰もが認めるところだ。『ラジオ・マルカ』の人気番組『ラ・ピサーラ・デ・キンターナ』でMCを務めるアドリアン・ブランコ氏は、そうした背景を考慮して「今回のベンチスタートにはタケの奮起を促す意味合いがあった。私は賢明な判断だったように思う」と主張するが、それは同時に、アルグアシル監督にとってリスクを背負った賭けでもあった。
 
 ラマホ氏も、「もしエスパニョール戦で勝利を逃していれば、チーム内に小さな火種が燻りはじめ、始動したばかりの新プロジェクトに最初の疑念が生じる危険性があった」と認めている。その際、アルグアシル監督は真っ先に、久保をスタメンから外した件について追究されていたことだろう。

 いずれにせよこの出来事が、今後大きな騒動に発展することは考えられないという。

 地元紙『ノティシアス・デ・ギプスコア』のソシエダ番記者、ミケル・レカルデ氏によると、久保はチーム内では「文句たれ」で通っているそうだ。PKを与えられなかったプレーについて数日間、ぶつぶつ文句を言っていることもあるという。しかしチームメイトには、そうしたところも含めて"愛されキャラ"として受け入れられており、スビメンディも前述の言葉を口にした時、笑顔を浮かべていたそうだ。またラマホ氏も、試合後チームメイトの誰もが久保を励ましていたと報じている。

 ただ同時に、レカルデ氏はこう釘を刺している。

「最も重要なことを見落としてはならない。危機感をあおって兵士の能力を最大限に引き出すのも結構だが、タケはソシエダの偉大なクラックのひとりだ」

 アルグアシル監督の注意喚起は奏功したかもしれないが、クラックと呼ばれる選手は常にピッチに立ち続けなければならない。そしてそれを久保なりに無言でアピールしたのが、チームに今シーズンの初勝利を呼び込むゴールを決めた後の、怒りのセレブレーションだったのではないか。

文●下村正幸

【動画】久保、豪快な先制ゴール! 祝福するチームメイトを撥ね退け、名前を誇示するパフォーマンス
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