怪我というのは往々にして「どうしてこのタイミングで…」という時に見舞われるものだが、今回のダニ・セバジョスの場合もまさにそうだった。
レアル・マドリーに残留を決め、今シーズン初めてスタメンのチャンスが回ってきたのはラ・リーガ第4節。しかも相手は、今夏に復帰することで個人合意に達していた古巣のベティスだった。しかし試合中に負傷し(スペイン紙『AS』によると負傷後も20分近くプレーを続行したという)、検査の結果、右足首の靭帯損傷を伴うグレードⅢの捻挫と診断。全治は6~8週間程度と見込まれている。
ダニ・セバジョスが今シーズンにかける思いは、例年にも増して強かった。怪我で出遅れた昨シーズンは、先発出場8試合、867分の出場にとどまった。ラ・リーガとチャンピオンズリーグの2冠を達成したチームの中で蚊帳の外に置かれているようでもあった。
しかし今シーズンは期待が膨らんでいた。トニ・クロースが退団し、ルカ・モドリッチが39歳を迎えるにもかかわらず、フロントは中盤の補強を見送った。カルロ・アンチェロッティ監督からも出場機会増を確約されていた。しかしいざ蓋を開けてみると、UEFAスーパーカップのアタランタ戦を皮切りに、ベンチスタートが続く。
そんな中、古巣ベティスがナビル・フェキルをUAEのアル・ジャジーラに売却した資金を元手に、アプローチをかけてきた。アンチェロッティ監督の言葉に再び疑問を感じ始めていたダニ・セバジョスにとっては渡りに船で、前述した通り個人合意に達したが、肝心のマドリーが首をタテに振らなかった。マドリーの要求額は2000万ユーロ(約31億円)。資金を工面できなかったベティスは獲得を断念し、二者択一のもう一方だったジオバニ・ロ・チェルソ(トッテナム)の加入を発表した。
結果的に復帰への最大の障壁となったのは、昨年6月に2027年6月まで契約を延長した判断だ。当時もベティスへの復帰が取り沙汰されていたが、迷った末に、アンチェロッティ監督からの慰留とシーズン終盤に出番が増えたことが決め手となり、契約延長を選択した。
ダニ・セバジョスのこの間の悪さというのは、2017年夏にマドリーに入団してからずっと続いている。本人が「キャリア最悪の瞬間」と振り返るのが東京五輪で負った怪我で(左足首を負傷)、大会中の復帰を目指して無理をしたために、余計に回復に時間がかかった。
アンチェロッティはナポリの監督に就任したばかりの頃、ダニ・セバジョスの獲得を強く希望していただけに、評価していることは確かだろうが、なかなか言っていることと実際の采配が一致しない。昨シーズンも中盤の世代交代はチームにとって喫緊の課題で、浮上のチャンスだったが、ジュード・ベリンガムの加入の煽りをもろに受ける格好になった。
実力は折り紙つきだ。経験を重ねるにつれ運動量や球際の強さといった泥臭さにも磨きをかけている。ただ球離れの悪さをよく指摘されるように、ボールに多く触ってこそ持ち味を発揮する選手で、中途半端な起用では良さが消えてしまう。現地では他クラブからの引き合いが多いと報じられている。しかし本人の希望はマドリー残留とベティス復帰の二者択一。この堂々巡りから抜け出すためにも、主役を張れるベティスへの復帰を推す声は少なくないが、自らの決断でその可能性を遠のかせてしまった。
「気品、ビジョン、シュート力、ドリブルを兼ね備える一方で、一貫性とチャンスを嗅ぎ分ける能力に欠け、断続的に輝いたり、根を下ろしたりすることを苦手にしている」
作家のハビエル・アスナール氏が昨年の契約延長後に『AS』紙のコラムに載せたこの指摘は、1年以上が経過した今も有効であり続けている。
文●下村正幸
【動画】バルベルデの鮮やかなヒールパスからエムバペが先制! 4節ベティス戦のハイライトをチェック!
レアル・マドリーに残留を決め、今シーズン初めてスタメンのチャンスが回ってきたのはラ・リーガ第4節。しかも相手は、今夏に復帰することで個人合意に達していた古巣のベティスだった。しかし試合中に負傷し(スペイン紙『AS』によると負傷後も20分近くプレーを続行したという)、検査の結果、右足首の靭帯損傷を伴うグレードⅢの捻挫と診断。全治は6~8週間程度と見込まれている。
ダニ・セバジョスが今シーズンにかける思いは、例年にも増して強かった。怪我で出遅れた昨シーズンは、先発出場8試合、867分の出場にとどまった。ラ・リーガとチャンピオンズリーグの2冠を達成したチームの中で蚊帳の外に置かれているようでもあった。
しかし今シーズンは期待が膨らんでいた。トニ・クロースが退団し、ルカ・モドリッチが39歳を迎えるにもかかわらず、フロントは中盤の補強を見送った。カルロ・アンチェロッティ監督からも出場機会増を確約されていた。しかしいざ蓋を開けてみると、UEFAスーパーカップのアタランタ戦を皮切りに、ベンチスタートが続く。
そんな中、古巣ベティスがナビル・フェキルをUAEのアル・ジャジーラに売却した資金を元手に、アプローチをかけてきた。アンチェロッティ監督の言葉に再び疑問を感じ始めていたダニ・セバジョスにとっては渡りに船で、前述した通り個人合意に達したが、肝心のマドリーが首をタテに振らなかった。マドリーの要求額は2000万ユーロ(約31億円)。資金を工面できなかったベティスは獲得を断念し、二者択一のもう一方だったジオバニ・ロ・チェルソ(トッテナム)の加入を発表した。
結果的に復帰への最大の障壁となったのは、昨年6月に2027年6月まで契約を延長した判断だ。当時もベティスへの復帰が取り沙汰されていたが、迷った末に、アンチェロッティ監督からの慰留とシーズン終盤に出番が増えたことが決め手となり、契約延長を選択した。
ダニ・セバジョスのこの間の悪さというのは、2017年夏にマドリーに入団してからずっと続いている。本人が「キャリア最悪の瞬間」と振り返るのが東京五輪で負った怪我で(左足首を負傷)、大会中の復帰を目指して無理をしたために、余計に回復に時間がかかった。
アンチェロッティはナポリの監督に就任したばかりの頃、ダニ・セバジョスの獲得を強く希望していただけに、評価していることは確かだろうが、なかなか言っていることと実際の采配が一致しない。昨シーズンも中盤の世代交代はチームにとって喫緊の課題で、浮上のチャンスだったが、ジュード・ベリンガムの加入の煽りをもろに受ける格好になった。
実力は折り紙つきだ。経験を重ねるにつれ運動量や球際の強さといった泥臭さにも磨きをかけている。ただ球離れの悪さをよく指摘されるように、ボールに多く触ってこそ持ち味を発揮する選手で、中途半端な起用では良さが消えてしまう。現地では他クラブからの引き合いが多いと報じられている。しかし本人の希望はマドリー残留とベティス復帰の二者択一。この堂々巡りから抜け出すためにも、主役を張れるベティスへの復帰を推す声は少なくないが、自らの決断でその可能性を遠のかせてしまった。
「気品、ビジョン、シュート力、ドリブルを兼ね備える一方で、一貫性とチャンスを嗅ぎ分ける能力に欠け、断続的に輝いたり、根を下ろしたりすることを苦手にしている」
作家のハビエル・アスナール氏が昨年の契約延長後に『AS』紙のコラムに載せたこの指摘は、1年以上が経過した今も有効であり続けている。
文●下村正幸
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