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海外サッカー

バルサ再建に奔走するスポーツディレクターのデコ、徒労感と失望感に苛まれ「俺は最も貧しいクラブのSDだ」とこぼしたことも…

下村正幸

2024.09.20

バルサ再建のキーパーソンのひとりであるスポーツディレクターのデコ。(C)Getty Images

バルサ再建のキーパーソンのひとりであるスポーツディレクターのデコ。(C)Getty Images

 今夏の移籍市場を終えて、最も疲労困憊になっただろう人物の1人がバルセロナのスポーツディレクター(SD)のデコだ。スペイン紙『AS』によると、「俺は最も貧しいクラブのSDだ」とある代理人にこぼしたこともあったという。そんな事情を背景にスペイン紙『スポルト』に辞任意向報道が出たが、クラブが即座にこれを否定し、それ以上の騒動に発展することはなかった。

 ただサラリーキャップにより動きを制限される中、どんなに交渉に奔走しても、その多くは徒労に終わり、選手登録問題にも直面した。『AS』紙は、「デコは徒労感と、思うように補強できなかったことによる失望感に苛まれている」と強調している。

 ジョアン・ラポルタ会長は、前述の『スポルト』紙のスクープ記事(デコの辞任意向報道)が出た直後に臨んだ記者会見で、デコの働きぶりを称えた。ただハンジ・フリック監督を連れてきたのも、ダニ・オルモを獲得したのも、すべてデコの主導によるものという発言は、うまく行かなかった時のための保険と深読みする識者もいる。

 クラブが厳しい状況だからこそ、非情の決断も下さなければならなかった。セルジ・ロベルトの残留よりも、マルク・カサドとマルク・ベルナルの待遇改善を優先したのはその代表例だ。結果的に、前キャプテンは退団せざるを得ず、セリエAのコモに新天地を求めたが、いずれも流出の危険性があった両若手を引き留め、居場所を確保するためには他に選択肢はなかった。結果的に2人がブレイクを果たしたのは周知の通り。『スポルト』のトニ・フアンマルティ記者は、「デコの勇気ある決断だった」と評価する。

 デコは、コーチングスタッフのテコ入れも図っている。自ら新フィジカルトレーナーとしてフリオ・トゥスを招聘し、スペイン紙『エル・パイス』は、それが「ペドリのコンディションの改善に繋がった」とも報じている。デコは、シャビ体制時のスタッフに配慮しながら、その狙いについてこう語っている。
 
「より質の高い、よりハイレベルのスタッフを連れてこようとしただけだ。以前のスタッフがどうこうというわけではないし、これまでが悪かったというわけではない。フィジカルの分野で改善していくための手段だった」

 一方で、補強よりも主力の引き留めがメインとなった理由については、こう説明している。

「何人かの選手にはオファーはあった。でもチームにとってその重要性を考えれば、失うわけにはいかなかった。我々はチームを作っているのであって、解体しているわけではない。フリックも(ダニ・オルモのほかに)一線級の新戦力を連れてくることができないのであれば、現有戦力を維持したほうがいいという考えだった」

 もちろんバルサのSDには息つく暇もない。今冬、来夏の移籍市場に備える必要があるのはもちろんのこと、現有戦力に目を向けても、フレンキー・デヨングとロベルト・レバンドフスキの去就、ペドリの契約延長(現行契約は2026年6月まで)、ラミネ・ヤマルとフェルミン・ロペスの待遇改善と、難しい案件が山積している。

 現役時代のデコは、気性の激しさとクレバーさを兼ね備えた選手だった。フロントに転身した今求められているのは、押すところは押して引くところは引くメリハリのある振る舞いで、バルサという生き馬の目を抜く超メガクラブのSD職を務め上げ、再建に導くことだ。

文●下村正幸

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