イタリアではよく、冬の移籍ウィンドウを「修復のメルカート」と呼ぶ。前半戦で期待したほどうまく機能しなかったチーム、故障者などにより陣容に穴ができたチームを「修復」するために新戦力を獲得できる、シーズン中唯一の機会だからだ。
そう考えれば、いまセリエAで最も積極的に補強に動いているのが、優勝戦線から脱落したばかりか、来シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)出場権を保証するトップ4にも届かない位置にとどまっているミランとユベントスだというのも納得がいく。
セリエAではいまだ無敗ながら、7勝13分の成績が物語るように勝ち切れない試合を重ねているユベントスは、パリ・サンジェルマンからフランス代表FWランダル・コロ・ムアニを獲得し、前線のテコ入れを図る。買い取りオプションがつかない半年だけのドライローンで、給与(税込み年俸900万ユーロ=約14億円)をユベントスが負担する形といわれる。
現在のユベントスにおいて、攻撃のフィニッシュを担うセンターフォワード(CF)として、絶対的なエースストライカーという立場を担ってきたのは、加入4年目を迎えた24歳のドゥシャン・ヴラホビッチだ。控えCFのアルカディウシュ・ミリクが昨年6月に膝を負傷(半月板損傷)し、当初は10月と見られていた復帰を大幅に遅らせていることもあり、シーズン開幕から昨年末までのほぼ全試合に先発出場。攻撃のフィニッシュ役を一手に担ってきた。
しかし、ここまでのパフォーマンスは、その重責に見合ったものとは言えないレベルにとどまっている。前半戦総括(※関連記事参照)でも触れた通り、セリエAでは16試合に出場して7得点で、しかもそのうち4点はPKによるもの。オープンプレーからの得点は3で、PKを除くゴール期待値(npxG)6.7を大きく下回る数字だ。
セリエAのFWでは、マルキュス・テュラム(インテル)が同じ6.7 npxGに対して12得点(+5.3/PKは0)を挙げているのを筆頭に、マリオ・レテギ(アタランタ)は7.3 npxGに対して11得点(+3.7/総得点は2PKを含め13)、ロレンツォ・ルッカ(ウディネーゼ)は3.0 npxGで7得点(+4.0/PKは0)、と、期待値を上回る得点力を発揮しているストライカーも少なくない。それに対してヴラホビッチの「-3.7」はリーグで最も悪い数字だ。
【動画】ユーベ公式が配信したヴラホビッチの2024年全ゴール!
とりわけ目立つのは、GKとの1対1のように、難易度は相対的に低いがその分プレッシャーが大きい状況でゴールを決め損ねる場面。コモ戦、ローマ戦、カリアリ戦、そしてパルマ戦と、ホームゲームでそうした場面が続いた時には、マスコミでも大きな話題になったものだ。
ユベントスのコロ・ムアニの獲得は、ミリクの復帰の遅れだけでなく、エースであるヴラホビッチの不満が残るパフォーマンスを受けた「修復」の一手であることは明らかだ。しかしそれだけではない。ここに来て、そのヴラホビッチがこの冬の移籍ウィンドウでユベントスを去る可能性までも、噂されているのだ。
もちろんこれはまだ噂の段階でしかないが、移籍先として候補に挙がっているのは、パリSGとアーセナル。プレミアリーグで悲願の優勝を狙うアーセナルは、ガブリエウ・ジェズスが靭帯損傷で長期離脱となり、CFがMFと兼業のカイ・ハバーツしかいない状況だ。ほかでもないコロ・ムアニをユベントスに貸し出したばかりのパリSGも、ゴンサロ・ラモスが公式戦11試合で5得点と期待を裏切っており、実質的にはCF不在に近い。
どちらのチームも、ポジショナルプレー志向の強い4ー3ー3が基本で、CFには「偽9番」を起用することも少なくないが、ひとつのオプションとして強力な「9番」を用意しておくことで、戦術やゲームプランの幅が大きく広がることは確かだ。
しかし、たとえ噂レベルの話に過ぎないにしても、CFが足りなくてコロ・ムアニをレンタルしたユベントスが、同じタイミングでヴラホビッチを手放す可能性があるというのはどういうことなのか。
その背景には、ユベントスの財政事情、そしてヴラホビッチと交わしている契約をめぐる問題がある。
そう考えれば、いまセリエAで最も積極的に補強に動いているのが、優勝戦線から脱落したばかりか、来シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)出場権を保証するトップ4にも届かない位置にとどまっているミランとユベントスだというのも納得がいく。
セリエAではいまだ無敗ながら、7勝13分の成績が物語るように勝ち切れない試合を重ねているユベントスは、パリ・サンジェルマンからフランス代表FWランダル・コロ・ムアニを獲得し、前線のテコ入れを図る。買い取りオプションがつかない半年だけのドライローンで、給与(税込み年俸900万ユーロ=約14億円)をユベントスが負担する形といわれる。
現在のユベントスにおいて、攻撃のフィニッシュを担うセンターフォワード(CF)として、絶対的なエースストライカーという立場を担ってきたのは、加入4年目を迎えた24歳のドゥシャン・ヴラホビッチだ。控えCFのアルカディウシュ・ミリクが昨年6月に膝を負傷(半月板損傷)し、当初は10月と見られていた復帰を大幅に遅らせていることもあり、シーズン開幕から昨年末までのほぼ全試合に先発出場。攻撃のフィニッシュ役を一手に担ってきた。
しかし、ここまでのパフォーマンスは、その重責に見合ったものとは言えないレベルにとどまっている。前半戦総括(※関連記事参照)でも触れた通り、セリエAでは16試合に出場して7得点で、しかもそのうち4点はPKによるもの。オープンプレーからの得点は3で、PKを除くゴール期待値(npxG)6.7を大きく下回る数字だ。
セリエAのFWでは、マルキュス・テュラム(インテル)が同じ6.7 npxGに対して12得点(+5.3/PKは0)を挙げているのを筆頭に、マリオ・レテギ(アタランタ)は7.3 npxGに対して11得点(+3.7/総得点は2PKを含め13)、ロレンツォ・ルッカ(ウディネーゼ)は3.0 npxGで7得点(+4.0/PKは0)、と、期待値を上回る得点力を発揮しているストライカーも少なくない。それに対してヴラホビッチの「-3.7」はリーグで最も悪い数字だ。
【動画】ユーベ公式が配信したヴラホビッチの2024年全ゴール!
とりわけ目立つのは、GKとの1対1のように、難易度は相対的に低いがその分プレッシャーが大きい状況でゴールを決め損ねる場面。コモ戦、ローマ戦、カリアリ戦、そしてパルマ戦と、ホームゲームでそうした場面が続いた時には、マスコミでも大きな話題になったものだ。
ユベントスのコロ・ムアニの獲得は、ミリクの復帰の遅れだけでなく、エースであるヴラホビッチの不満が残るパフォーマンスを受けた「修復」の一手であることは明らかだ。しかしそれだけではない。ここに来て、そのヴラホビッチがこの冬の移籍ウィンドウでユベントスを去る可能性までも、噂されているのだ。
もちろんこれはまだ噂の段階でしかないが、移籍先として候補に挙がっているのは、パリSGとアーセナル。プレミアリーグで悲願の優勝を狙うアーセナルは、ガブリエウ・ジェズスが靭帯損傷で長期離脱となり、CFがMFと兼業のカイ・ハバーツしかいない状況だ。ほかでもないコロ・ムアニをユベントスに貸し出したばかりのパリSGも、ゴンサロ・ラモスが公式戦11試合で5得点と期待を裏切っており、実質的にはCF不在に近い。
どちらのチームも、ポジショナルプレー志向の強い4ー3ー3が基本で、CFには「偽9番」を起用することも少なくないが、ひとつのオプションとして強力な「9番」を用意しておくことで、戦術やゲームプランの幅が大きく広がることは確かだ。
しかし、たとえ噂レベルの話に過ぎないにしても、CFが足りなくてコロ・ムアニをレンタルしたユベントスが、同じタイミングでヴラホビッチを手放す可能性があるというのはどういうことなのか。
その背景には、ユベントスの財政事情、そしてヴラホビッチと交わしている契約をめぐる問題がある。
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