2025年の冬の移籍マーケット、5大リーグの中でプレミアリーグに続いて二番目に多い資金が動いたのはイタリア・セリエAだった。パリ・サンジェルマンからランダル・コロ・ムアニを獲得したユベントス、チェルシーからジョアン・フェリックスを獲得したミランなどメガクラブの動向に注目が集まったが、最も多くカネを使ったのは、現在16位と残留争いの真っ只中にいるコモだった。
10人の新戦力に投じた4920万ユーロ(約78.7億円)は、J・フェリックスに加えてサンティアゴ・ヒメネス(フェイエノールト)、カイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)らの獲得に4850万ユーロ(約77.6億円)を費やしたミランをも上回る数字だ。
コモが獲得したのはMFマクソンス・カクレ(リヨン・24歳)、FWアナスタシオス・ドゥビカス(セルタ・25歳)、アサネ・ディアオ(ベティス・19歳)といった若手・中堅だが、それ以外にもマーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・ユナイテッド→アストン・ビラ)やテオ・エルナンデズ(ミラン)といった大物の獲得にも本気で乗り出し、具体的な移籍交渉を進めていた。さらに、元イングランド代表でこの冬まで無所属だった28歳のMFデレ・アリと契約して再起に手を差しのべてもいる。
セリエBから昇格してきたばかりの小さな「プロビンチャーレ」(地方都市の中小クラブ)でしかないコモに、なぜこれだけの大盤振る舞いが可能なのか。シャビやアンドレス・イニエスタと共に黄金時代のスペイン代表で中盤を支えたセスク・ファブレガスを監督に据えたこのクラブは、どんな野心を持っているのか。それを探るためにはまず、このクラブのオーナーについて知ることが必要だろう。
コモを保有しているのは、インドネシア三大財閥のひとつである「ジャルム」グループを率いるハルトノ家。「ジャルム」は、クレテックと呼ばれるインドネシア独特のフレーバーつき煙草の大手メーカーのひとつ(日本ではライバルの「ガラム」の方が有名かもしれない)。この煙草で財をなしたハルトノ家は金融、不動産、家電、食品、流通からメディアまで幅広い分野に事業を拡げて一大財閥に成長した。その資産はフォーブスの億万長者ランキングでトップ100に入る480億ドル(約7兆5000億円)にも上っている。
コモの買収は、イギリスに本拠を置く傘下のメディア企業セント・エンターテインメントが、サッカーを題材にしたドキュメンタリー番組を制作しようと考え、その題材としてコモに目をつけたことがきっかけ。当時のコモは、2017年に破産した後アマチュアのセリエDから再出発を図り、プロの最低カテゴリーであるセリエCに昇格したばかりだった。それを2019年に買い取り、積極的な投資で2021年にセリエB、そして昨年夏にはセリエAにまで引き上げたというわけだ。
クラブを率いるのは、オーナー家から送り込まれた39歳のミルワン・スワルソ。セント・エンターテインメントの幹部を務めていたメディアプロデューサーで、買収当初からプロジェクトの中心だったが、昨年10月から会長に就任して全権を握っている。そのスワルソ会長が描くコモの未来構想は、他のいかなるサッカークラブのそれとも明らかに異なるものだ。というのも、コモのプロジェクトは「サッカー」の枠を大きく超えて広がっているからだ。
【動画】コモの最新試合ハイライト & 街の魅力が詰め込まれた1分30秒の特別ムービー
スワルソ会長は最近のインタビューでこう語っている。
「コモの人口は8万5000人に過ぎず、サッカーだけで経営を維持するのは非常に困難だ。しかし幸運なことに我々には『コモ湖』という世界的な観光ブランドがある。この地域には毎年480万人もの観光客が訪れる。これを活用しない手はない。サッカーをビジネスの中心ではなく構成要素のひとつとして位置付け、サッカーを使って知名度を上げる一方で、コモ湖の観光と結びつけることで独自の価値を生み出し、『コモ』を国際的なブランドに育てるのが目標だ。このビジネスモデルをディズニーに似たものとして考えている」
コモにとってテーマパークにあたるのは、スタジアムを舞台にコモの試合が提供する体験の全体であり、クラブはそれに関連するあらゆる商品やサービスを開発・提供することで、観光デスティネーションとしての「コモ」ブランド全体価値を高めるビジネスと考えている、というわけだ。
実際コモのクラブ内部には、アパレル、メディア、不動産、観光、教育、デジタル、消費財といった事業部門を持ち、それぞれがサッカーを核として連携しながら、しかしサッカーの枠を大きく超えた領域でビジネスを展開しつつある。つい先日には、老朽化が激しいスタジアムを全面改築する構想を市と共同で発表したばかりだ。
しかしもちろん、その中核にあってイメージリーダーとして最も重要な役割を担うのは、セスク率いるサッカー部門(トップチーム)だ。セリエA昇格直後の昨夏に4750万ユーロ(約76億円)、今冬にすでに見た通り4920万ユーロ、合わせて1億ユーロ(約160億円)近い資金を投じてチーム強化を進めてきたのも、セリエA定着、さらには上位進出までを視野に入れているからにほかならない。
10人の新戦力に投じた4920万ユーロ(約78.7億円)は、J・フェリックスに加えてサンティアゴ・ヒメネス(フェイエノールト)、カイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)らの獲得に4850万ユーロ(約77.6億円)を費やしたミランをも上回る数字だ。
コモが獲得したのはMFマクソンス・カクレ(リヨン・24歳)、FWアナスタシオス・ドゥビカス(セルタ・25歳)、アサネ・ディアオ(ベティス・19歳)といった若手・中堅だが、それ以外にもマーカス・ラッシュフォード(マンチェスター・ユナイテッド→アストン・ビラ)やテオ・エルナンデズ(ミラン)といった大物の獲得にも本気で乗り出し、具体的な移籍交渉を進めていた。さらに、元イングランド代表でこの冬まで無所属だった28歳のMFデレ・アリと契約して再起に手を差しのべてもいる。
セリエBから昇格してきたばかりの小さな「プロビンチャーレ」(地方都市の中小クラブ)でしかないコモに、なぜこれだけの大盤振る舞いが可能なのか。シャビやアンドレス・イニエスタと共に黄金時代のスペイン代表で中盤を支えたセスク・ファブレガスを監督に据えたこのクラブは、どんな野心を持っているのか。それを探るためにはまず、このクラブのオーナーについて知ることが必要だろう。
コモを保有しているのは、インドネシア三大財閥のひとつである「ジャルム」グループを率いるハルトノ家。「ジャルム」は、クレテックと呼ばれるインドネシア独特のフレーバーつき煙草の大手メーカーのひとつ(日本ではライバルの「ガラム」の方が有名かもしれない)。この煙草で財をなしたハルトノ家は金融、不動産、家電、食品、流通からメディアまで幅広い分野に事業を拡げて一大財閥に成長した。その資産はフォーブスの億万長者ランキングでトップ100に入る480億ドル(約7兆5000億円)にも上っている。
コモの買収は、イギリスに本拠を置く傘下のメディア企業セント・エンターテインメントが、サッカーを題材にしたドキュメンタリー番組を制作しようと考え、その題材としてコモに目をつけたことがきっかけ。当時のコモは、2017年に破産した後アマチュアのセリエDから再出発を図り、プロの最低カテゴリーであるセリエCに昇格したばかりだった。それを2019年に買い取り、積極的な投資で2021年にセリエB、そして昨年夏にはセリエAにまで引き上げたというわけだ。
クラブを率いるのは、オーナー家から送り込まれた39歳のミルワン・スワルソ。セント・エンターテインメントの幹部を務めていたメディアプロデューサーで、買収当初からプロジェクトの中心だったが、昨年10月から会長に就任して全権を握っている。そのスワルソ会長が描くコモの未来構想は、他のいかなるサッカークラブのそれとも明らかに異なるものだ。というのも、コモのプロジェクトは「サッカー」の枠を大きく超えて広がっているからだ。
【動画】コモの最新試合ハイライト & 街の魅力が詰め込まれた1分30秒の特別ムービー
スワルソ会長は最近のインタビューでこう語っている。
「コモの人口は8万5000人に過ぎず、サッカーだけで経営を維持するのは非常に困難だ。しかし幸運なことに我々には『コモ湖』という世界的な観光ブランドがある。この地域には毎年480万人もの観光客が訪れる。これを活用しない手はない。サッカーをビジネスの中心ではなく構成要素のひとつとして位置付け、サッカーを使って知名度を上げる一方で、コモ湖の観光と結びつけることで独自の価値を生み出し、『コモ』を国際的なブランドに育てるのが目標だ。このビジネスモデルをディズニーに似たものとして考えている」
コモにとってテーマパークにあたるのは、スタジアムを舞台にコモの試合が提供する体験の全体であり、クラブはそれに関連するあらゆる商品やサービスを開発・提供することで、観光デスティネーションとしての「コモ」ブランド全体価値を高めるビジネスと考えている、というわけだ。
実際コモのクラブ内部には、アパレル、メディア、不動産、観光、教育、デジタル、消費財といった事業部門を持ち、それぞれがサッカーを核として連携しながら、しかしサッカーの枠を大きく超えた領域でビジネスを展開しつつある。つい先日には、老朽化が激しいスタジアムを全面改築する構想を市と共同で発表したばかりだ。
しかしもちろん、その中核にあってイメージリーダーとして最も重要な役割を担うのは、セスク率いるサッカー部門(トップチーム)だ。セリエA昇格直後の昨夏に4750万ユーロ(約76億円)、今冬にすでに見た通り4920万ユーロ、合わせて1億ユーロ(約160億円)近い資金を投じてチーム強化を進めてきたのも、セリエA定着、さらには上位進出までを視野に入れているからにほかならない。
関連記事
- CLリーグフェーズのイタリア勢を総括「チームとしての成熟度や経験値の差が、パフォーマンスと結果に表われた」【現地発コラム】
- CLトップ8にインテル、ミラン、アタランタ、EL1位がラツィオで、フィオがECL3位「セリエAが低迷期からようやく脱却し、復権に向けて確かな歩みを」【現地発コラム】
- 『セリエA“ビッグ3”前半戦総括:ユベントス編』エースの決定力の低さが勝ちきれない要因「後半戦はトップ4入り争いが焦点に」【現地発コラム】
- 【画像】次にブレイクするのは誰?次世代を担うストライカーを厳選して紹介!
- 【画像】ドリームチーム撃破、イスタンブールの奇跡、マドリーの3連覇etc...CL歴代王者の戴冠シーンを一挙公開!