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日本代表

W杯の地上波放送は続くのか⁉放送権料高騰の流れに潮目の変化も

石田英恒

2019.09.15

全世界で注目を集めるワールドカップ。地上波テレビで視聴できるかどうかは、ファンにとって大きな問題だ。(C) Getty Images

全世界で注目を集めるワールドカップ。地上波テレビで視聴できるかどうかは、ファンにとって大きな問題だ。(C) Getty Images

 さらに、昨年、2026年ワールドカップが米国、カナダ、メキシコの3か国共同開催に決まり、出場国数が現行の32チームから48チームに、試合数が現行の64試合から80試合に増加することになった。3チームのグループリーグの後、32チームで決勝トーナメントを行なう。

 出場国が増えればその分、大会経費がかかることから、FIFA(国際サッカー連盟)としては、2026年大会の放送権料は、2022年カタール大会より増やしたいはずだ。経済成長が著しい中国へのFIFAの期待もあるが、世界的に放送界には資金がなくなってきている。

 例えばヨーロッパは、2006年ドイツ大会では、スペイン、ドイツ、イングランド、フランスの放送局だけで計1000億円に達していたが、2010年南アフリカ大会から放送権料は下がる傾向にある。米国も2018年、2022年をピークに放送権料が下がっていく可能性があるという。

 理由として、今後の世界的な景気減速、また高額放送権料を支えていた有料衛星放送の契約数、受信料収入が頭打ちになっている懸念が挙げられる。そのため、放送権料を増やしたいFIFA(国際サッカー連盟)と各国放送局との間では今後、激しい綱引きが続くと見られている。

 東京オリンピックの放送権料は、IOC(国際オリンピック委員会)、JCによると525億円。自国開催の夏のオリンピックは、日本にとってこれ以上はない大きなイベントだ。その東京オリンピックの放送権料を、日本がまだ大会出場権を得ていない段階で、他国開催のワールドカップの放送権料が超えるのは、基本的にはあり得ないことと言っていい。
 今後のワールドカップの放送権交渉では、525億円が交渉額の絶対的な上限になると思われる。東京オリンピックの次の2024年パリ・オリンピックの日本の放送権料は400億円台、次の2028年ロサンゼルス・オリンピックの放送権料もそれと同程度になるか、下がる予定だ。

 逆にいえば、FIFAが525億円を超えるワールドカップ放送権料を強硬に日本に要求してきた場合、JCの枠組みは崩壊し、ワールドカップの地上波放送がなくなる可能性があるということでもある。JCの枠組みが崩壊した場合は、NHKと民放(1~2社)と有料ネット系放送局(ダ・ゾーンなど)の組み合わせで高額放送権料に対処していく動きが起きていくと思われる。自国開催のオリンピックより高いワールドカップの放送権料はあり得ないと考えれば、FIFAの姿勢によっては日本のワールドカップの放送権料は下がっていくとも考えられる。

 2022年ワールドカップの全試合視聴はできそうだが、2026年は一部の試合の中継がなくなる可能性が高い。さらに2030年は、地上波放送がなくなるか、逆に全試合視聴に戻るか、どちらに転ぶかは分からないが、大きな潮目の変化があるのは確実な情勢になっている。

取材・文●石田英恒(フリーライター)

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