イタリアのスタメン11人(3ー5ー1ー1)は以下のような構成だった。
GK:ジャンルイジ・ドンナルンマ(パリSG)
DF:ディ・ロレンツォ(ナポリ)、アレッサンドロ・バストーニ(インテル)、リッカルド・カラフィオーリ(アーセナル)
MF:アンドレア・カンビアーゾ(ユベントス)、フラッテージ(インテル)、サムエレ・リッチ(トリノ)、トナーリ(ニューカッスル)、ディマルコ(インテル)
トップ下:ロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)
CF:レテギ(アタランタ)
ほぼ全員がクラブチームで慣れ親しんでいる(少なくとも十分な経験のある)ポジションで起用されており、その意味でEUROでの選手起用と比べてより適材適所。それもあって個々のプレーヤー、そしてチームとしての振る舞いはより「自然」で、かつ自信に満ちたものだった。そこは、戸惑いや混乱が明らかに見て取れたEURO(とりわけスイス戦)とは明らかに違っていた。
戦術的には、システムだけでなく攻守のメカニズムという観点からも、インテルとの共通点が少なくない。最も特徴的だったのは、ビルドアップの流れの中で左CBのカラフィオーリが中盤にポジションを上げてMF的に振る舞い、入れ替わりにアンカーのリッチが最終ラインに落ちる「縦のポジションチェンジ」、そして左右のウイングバックが1レーン内側に入り、インサイドハーフが大外レーンに開く「横のポジションチェンジ」が頻繁に見られたこと。
この流動的なポジションチェンジによって相手に守備の基準点を与えず、マークを逃れてフリーで前を向いた選手からの大きなサイドチェンジで局面を一気に前に進め、外からのコンビネーションやクロスで決定機を作り出すというのが、この試合でイタリアが見せた攻撃のメカニズムだった。
6分に初めて作り出したビッグチャンス(フラッテージのヘディングシュートがクロスバーに嫌われ、そのこぼれ球に合わせたレテギのヘディングは枠を外す)に始まり、30分にディマルコが決めた同点ゴール、そして74分の3点目と、明確な決定機はいずれもサイドチェンジが起点となって生まれたもの。そのいずれにも、大外からゴール前に入ってきたウイングバック(カンビアーゾ、ディマルコ)が絡んでいるところも含めて、いい意味で「インテル風味」の強いサッカーになったと言うことができる。
個に焦点を当てれば、中盤に進出する頻度が大きく高まるなどますます攻撃への貢献度を高めているカラフィオーリ、これが代表初スタメンながらそのカラフィオーリと絶妙な連携を見せてゲームメーカーの役割を担ったリッチ、違法賭博による長期の出場停止明けにもかかわらず90分を通して攻守両局面で獅子奮迅の活躍を見せたトナーリ、そしてすでに言及した両ウイングバックのパフォーマンスがとりわけ際立っていた。とはいえピッチに立ったほぼ全員が本来の持ち味を発揮しており、及第点を下回った選手はいなかったと言っていい。これは「適材適所」がもたらした大きな成果と言えるだろう。
まだ最初の1試合に過ぎないが、EUROであれだけ酷い戦いぶりしか見せられなかったチームが、フランスを相手に敵地でこれだけのパフォーマンスを見せたうえで結果を残したこと、そして何よりチームとしての自然な振る舞いを取り戻し、明確なアイデンティティーの確立に向けたポジティブな一歩を踏み出したことは、大いに喜ぶべきだろう。
フランスに加えてベルギー、イスラエルと同居しているこのネーションズリーグでは、リーグA各グループの上位2チームにW杯予選で第1シード(ポット1)が保証される。2大会連続で出場権を逃しているイタリアにとっては、その意味でも非常に重要な戦いだ。政治的な理由から中立地のブダペストで行なわれる次のイスラエル戦でも、しっかり勝点3を確保したい。
文●片野道郎
【関連記事】バロンドールのノミネート30人発表! EUROで覇権を争ったスペインとイングランドから最多6人ずつが選出。メッシ&ロナウドは選外に
GK:ジャンルイジ・ドンナルンマ(パリSG)
DF:ディ・ロレンツォ(ナポリ)、アレッサンドロ・バストーニ(インテル)、リッカルド・カラフィオーリ(アーセナル)
MF:アンドレア・カンビアーゾ(ユベントス)、フラッテージ(インテル)、サムエレ・リッチ(トリノ)、トナーリ(ニューカッスル)、ディマルコ(インテル)
トップ下:ロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)
CF:レテギ(アタランタ)
ほぼ全員がクラブチームで慣れ親しんでいる(少なくとも十分な経験のある)ポジションで起用されており、その意味でEUROでの選手起用と比べてより適材適所。それもあって個々のプレーヤー、そしてチームとしての振る舞いはより「自然」で、かつ自信に満ちたものだった。そこは、戸惑いや混乱が明らかに見て取れたEURO(とりわけスイス戦)とは明らかに違っていた。
戦術的には、システムだけでなく攻守のメカニズムという観点からも、インテルとの共通点が少なくない。最も特徴的だったのは、ビルドアップの流れの中で左CBのカラフィオーリが中盤にポジションを上げてMF的に振る舞い、入れ替わりにアンカーのリッチが最終ラインに落ちる「縦のポジションチェンジ」、そして左右のウイングバックが1レーン内側に入り、インサイドハーフが大外レーンに開く「横のポジションチェンジ」が頻繁に見られたこと。
この流動的なポジションチェンジによって相手に守備の基準点を与えず、マークを逃れてフリーで前を向いた選手からの大きなサイドチェンジで局面を一気に前に進め、外からのコンビネーションやクロスで決定機を作り出すというのが、この試合でイタリアが見せた攻撃のメカニズムだった。
6分に初めて作り出したビッグチャンス(フラッテージのヘディングシュートがクロスバーに嫌われ、そのこぼれ球に合わせたレテギのヘディングは枠を外す)に始まり、30分にディマルコが決めた同点ゴール、そして74分の3点目と、明確な決定機はいずれもサイドチェンジが起点となって生まれたもの。そのいずれにも、大外からゴール前に入ってきたウイングバック(カンビアーゾ、ディマルコ)が絡んでいるところも含めて、いい意味で「インテル風味」の強いサッカーになったと言うことができる。
個に焦点を当てれば、中盤に進出する頻度が大きく高まるなどますます攻撃への貢献度を高めているカラフィオーリ、これが代表初スタメンながらそのカラフィオーリと絶妙な連携を見せてゲームメーカーの役割を担ったリッチ、違法賭博による長期の出場停止明けにもかかわらず90分を通して攻守両局面で獅子奮迅の活躍を見せたトナーリ、そしてすでに言及した両ウイングバックのパフォーマンスがとりわけ際立っていた。とはいえピッチに立ったほぼ全員が本来の持ち味を発揮しており、及第点を下回った選手はいなかったと言っていい。これは「適材適所」がもたらした大きな成果と言えるだろう。
まだ最初の1試合に過ぎないが、EUROであれだけ酷い戦いぶりしか見せられなかったチームが、フランスを相手に敵地でこれだけのパフォーマンスを見せたうえで結果を残したこと、そして何よりチームとしての自然な振る舞いを取り戻し、明確なアイデンティティーの確立に向けたポジティブな一歩を踏み出したことは、大いに喜ぶべきだろう。
フランスに加えてベルギー、イスラエルと同居しているこのネーションズリーグでは、リーグA各グループの上位2チームにW杯予選で第1シード(ポット1)が保証される。2大会連続で出場権を逃しているイタリアにとっては、その意味でも非常に重要な戦いだ。政治的な理由から中立地のブダペストで行なわれる次のイスラエル戦でも、しっかり勝点3を確保したい。
文●片野道郎
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