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「活躍をすぐに期待するのは明らかに過大」ミランの“神童”カマルダ、16歳でCLデビュー&幻ゴールも…「段階を踏んで成長し、1~2年後のブレイクが理想的」【現地発コラム】

片野道郎

2024.10.24

87分にはCKからのクロスに頭で合わせてネットを揺らしたが、VARチェックの末にオフサイド判定となった。(C)Alberto LINGRIA

87分にはCKからのクロスに頭で合わせてネットを揺らしたが、VARチェックの末にオフサイド判定となった。(C)Alberto LINGRIA

 そんなカマルダにとって今シーズンは、ユースカテゴリーを飛び級で「卒業」し、大人のカテゴリーで本格的なプロキャリアをスタートした最初のシーズンということになる。主戦場となっているのは、ミランが今シーズン、プリマベーラとトップチームのギャップを埋めるために新設したUー23のBチーム「ミラン・フトゥーロ」(セリエC=3部リーグ)。ここでもレギュラーCFとして背番号9を背負い、ここまで5試合1得点という結果を残している。

 今回のCLデビューは、タミー・エイブラハムが故障離脱、ルカ・ヨビッチが登録メンバー外という状況で、モラタの控えとして招集されたもの。このブルージュ戦に備え、週末のセリエCでは前半45分だけで交代して疲労を抑えていた。

 冒頭で見た通り、途中出場したデビュー戦の限られた時間の中で、「幻」に終わったとはいえ、密集の中でフリーになってヘディングシュートを放って見せた事実は、持てるタレントの証明と言える。とはいえ、ユースカテゴリーで「神童」と呼ばれても、大人のカテゴリーで同じように傑出した存在となり、決定的な違いを作り出せるとは限らない。

 例えば、同じミランで10年前に同じような注目を集めたハキム・マストゥールは、その後まったく結果を残せないまま、今26歳でキャリアを終えようとしている。バルセロナのカンテラで900以上とも言われるゴールを挙げたボージャン・クルキッチも、17歳でトップチームにデビューしたシーズン(10得点3アシスト)がキャリアハイで、その後は「並の」ストライカーとしてキャリアを送った。「神童」は毎年のように生まれても、リオネル・メッシやヤマルは30年に1人しか生まれないのがフットボールの現実だ。
 
 何よりも忘れるわけにいかないのは、カマルダはまだ「たったの」16歳に過ぎないという事実。すでにユースカテゴリーの枠に収まらないレベルに到達しているとはいえ、セリエAやCLでの活躍をすぐに期待するのは明らかに過大だろう。
 
 ヤマルは別格だが、ワレン・ザイール=エムリ(パリ・サンジェルマン)やコビー・メイヌー(マンチェスター・ユナイテッド)からアルダ・ギュレル(レアル・マドリー)、ケナン・ユルドゥズ(ユベントス)まで、今18~19歳で5大リーグやCLで活躍しているスーパーなタレントたちのほとんどは、16~17歳の頃に大人のカテゴリーの入り口であるBチームで伸び伸びとプレーしながら経験を重ね、段階を踏んで成長してきた。カマルダもまた同じような経験を経て、より完成されたストライカーとして1年後、2年後にトップチームでブレイクするのが理想的なキャリアパスではないだろうか。

 イタリアでは、インザーギ、クリスティアン・ヴィエリ、ヴィンチェンツォ・モンテッラ、フランチェスコ・トッティ、アレッサンドロ・デル・ピエロら1970年代生まれの世代を最後にここ20年以上、ワールドクラスのストライカーが生まれていない。

 その意味でカマルダは、ミランにとってはもちろんイタリア代表にとっても、今後10年から15年の未来を担うべき至宝と言える。これからも大きな注目と期待を浴びることは避けられないが、過大なプレッシャーに潰されることなく着実に成長してくれることを願って止まない。

文●片野道郎

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