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海外サッカー

コンテ・ナポリを完封! アタランタのガスペリーニ監督が試みた“効果的な戦術的一手”とは「CFレテギを外し、トップ下にパシャリッチを入れ…」【現地発コラム】

片野道郎

2024.11.07

ナポリのコンテ監督(右)とアタランタのガスペリーニ監督(左)。(C)Getty Images

ナポリのコンテ監督(右)とアタランタのガスペリーニ監督(左)。(C)Getty Images

 かくしてナポリは、敵陣までボールを運んで相手を押し込む以前にミドルゾーンでボールを奪われ、アタランタにボールを委ねて受けに回る展開を強いられた。10分という早い時間帯に喫した先制点は、ポゼッションで押し込まれて左サイドからのクロスを許し、そのクリアを拾っての二次攻撃からアデモラ・ルックマンに決められたもの。

 前線に6~7人を送り込むアタランタの攻撃の前に受け身の対応を強いられ、タイミング良く後方から入り込んできたルックマンを誰も捕まえられずフリーにした結果の失点だった。

 その失点直後、ルカクがこの試合で初めてヒエンのマークを逃れて成功させたポストプレーから、その落としを受けたマクトミネイが放ったゴールポスト直撃のシュートが、ナポリが流れから作り出した唯一の決定機らしい決定機になった。

 31分、そのナポリが珍しく押し込んだ直後に、カウンターアタックからアタランタの追加点が生まれる。クバラツヘリアが左サイドから強引なドリブルで中央に持ち込んだボールを奪ったところから、高めの位置に攻め残っていたシャルル・デ・ケテラーレがドリブルで持ち上がり、2人をかわして逆サイドのルックマンに展開。パスを受けたルックマンは、左45度から強烈なミドルシュートをゴール右隅に突き刺した。

 昨シーズンのヨーロッパリーグ決勝で、レバークーゼン相手にハットトリックを決めて優勝の立役者になったルックマンは、左ハーフスペースからの仕掛けから見せる強力なシュートが最大の持ち味。時には強引に見えるほど積極的にシュートを打っていくが、その多くはしっかり枠を捉えている。9節のヴェローナ戦に続く今シーズン二度目の「ドッピエッタ(1試合2得点)」で得点数を6に伸ばし、得点王ランキングで3位タイに浮上した。

 そのルックマンを上回り、得点王ランキングのトップを走るのがレテギだ。この試合は指揮官の戦術的選択でスタメンを外れたものの、76分にデ・ケテラーレに替わって途中出場すると、92分に右サイドからのクロスをボレーシュートでゴール右隅にねじ込み、シーズン11点目をマークした。
 
 アルゼンチンリーグ中位のティグレからジェノアに移籍したセリエA1年目の昨シーズンは、年間で7点しか挙げられなかったことを考えると、アタランタに移籍した今シーズンの進歩は著しいものがある。

 前線で孤立することが多かったジェノア時代と比べ、アタランタでは複数の選手から近い距離でサポートを受けることが可能であり、その恩恵を受ける形で手に入れた決定機を、持ち前の得点感覚でしっかりゴールに結びつけている。

 実際、90分あたりのシュート数はリーグ1位、枠内シュート数、ゴール期待値(xG)もトップ3位に入っている。ここまで打ったシュート37本(うち枠内14本)の累積xG6.8に対して、その期待値を4.2も上回る11ゴールを挙げているのだから、そのゴールセンスは本物だ。

 アタランタは終始押し気味の展開で試合をコントロールし、ナポリにつけ入る隙を与えなかった。ガスペリーニ就任9年目でチームの骨格が完全に固まっているうえに戦術の完成度も高く、この試合で見せた3ー4ー1ー2のようなバリエーションも完璧に消化してこなすことができる。

 昨シーズンの中核だったトゥーン・コープマイネルスをユベントスに引き抜かれ、CFジャンルカ・スカマッカもプレシーズンの靭帯断裂で長期離脱(その穴埋めに急遽獲得したのがレテギ)する困難に直面しながら、すでにこの水準に到達しているのは、長年保たれてきたチームとしての継続性と一貫性が堅固な土台となっているからこそだろう。

 一方のナポリは、攻撃の基準点であるルカクのポストプレーが封じられると、それに替わる攻め手がなく、手詰まりになるという弱点を露呈した格好だ。ただ、コンテは就任1年目でチームの戦術もまだ構築途上であり、レパートリーの幅を拡げる段階には到達していないことが、この試合で明らかになったと言える。「コンテ・プロジェクト」は、軌道には乗ったものの、まだまだ初期段階ということだ。

文●片野道郎

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