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海外サッカー

“三兎を追う”満身創痍のインテルは「今後2週間が重要な節目」スクデット争いは、セリエAに専念できるナポリが有利か【現地発コラム】

片野道郎

2025.03.03

途中出場のビリングが87分に値千金の同点弾。一度はインテルのGKマルティネスにシュートを阻まれたが、こぼれ球を押し込んだ。(C)Getty Images

途中出場のビリングが87分に値千金の同点弾。一度はインテルのGKマルティネスにシュートを阻まれたが、こぼれ球を押し込んだ。(C)Getty Images

 失点の場面でインテル最終ラインの枚数は揃っていたものの、2列目から上がってきたビリングを誰も見ておらず、さらに本職ではない左WBに入っていたドゥムフリースの絞りが甘かったために、ゴール前中央でフリーにしてしまった。インザーギ監督は80分に、それまで二度のシュートブロックで決定機を阻むなど攻守を見せていたバストーニを交代で下げている。この失点はそれが裏目に出た格好だった。

 バストーニの交代は、次のミッドウィークに控えたCLラウンド・オブ16(フェイエノールト戦)を見据えたターンオーバーと推測される。実際、代替要員が全員故障していたため、疲労にもかかわらず出場を強いられたディマルコが不調を訴えて交代したように、コンディションの維持・管理にターンオーバーは不可欠だ。しかし今シーズン、そうした形でバストーニを下げた後に失点を喫したのは、これが7試合目(※編集部・注/ミラン、ウディネーゼ、トリノ、パルマ、フィオレンティーナ、ユベントス、ナポリ戦)。インザーギ監督も頭が痛いところだろう。

 後半だけを見ると、ボール支配率は68%対32%、シュート本数は12対0(枠内シュートは4対0)、ゴール期待値は1.27対0.00と文字通り一方的な展開だった。これだけ攻め立てたにもかかわらず、残り3分にようやく1点を奪って引き分け止まりというのは、ナポリにとっては不本意な結果だろう。コンテ監督がもう少し早く交代カードを切っていれば、力で押し切ることも可能だったかもしれない。
 
 その意味で救われたとも言えるインテルは、シーズンを通して週2試合ペースが続くハードスケジュールによる疲弊が深刻化しており、満身創痍と言っていい状況。元々はメンバーを固定して戦う傾向が強いインザーギ監督も、今シーズンはそれを見越して積極的なターンオーバーを行ない、出場時間の調整による選手のコンディション管理に務めてきた。しかし現状を見ると、それでもまだ十分ではないようだ。

 どうにか首位の座を守ったとはいえ、故障者続出で選手層が大きく削られ、ターンオーバーすらままならない状態で3月を迎えた現状は、決して楽観を許さないものだ。フェイエノールトとのCL2試合、そして3位アタランタとの直接対決と続くここからの2週間は、シーズンの行方を左右する重要な節目となるだろう。

 一方のナポリは、欧州カップ戦がなくコッパ・イタリアでも敗退済みで、セリエAの残り11試合に集中できる状態にある。対戦相手もここからの4試合でフィオレンティーナ、ミラン、ボローニャと当たるものの、続く最後の7試合はすべて二桁順位の下位勢との対戦。総合的に見れば有利な立場にいるように見える。

 直接対決で決着がつかなかったスクデット争いが果たしてここからどのように展開していくのか。2位ナポリに2ポイント差でつける3位アタランタも含めた三つ巴の戦いから、当分目が離せそうにない。

文●片野道郎

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