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海外サッカー

“コントロール”を失わなかったインテルと、“軽率かつ重大な失態”のアタランタ。上位対決の分水嶺は「経験値の差」【現地発コラム】

片野道郎

2025.03.19

1点を追うアタランタは、81分にエデルソンが抗議と主審への挑発行為で2枚のイエローカードを受けて退場。あまりにも軽率な行為だった。(C)Getty Images

1点を追うアタランタは、81分にエデルソンが抗議と主審への挑発行為で2枚のイエローカードを受けて退場。あまりにも軽率な行為だった。(C)Getty Images

 失点して間もない59分に、トップ下としては守備的なパシャリッチを下げ、よりテクニカルで攻撃的なシャルル・デ・ケテラーレを投入したガスペリーニ監督は、それでも拮抗した試合の流れを変えられないと見るや、さらに動く。

 74分に、この日CBフランチェスコ・アチェルビに完封されていたCFマテオ・レテギに代えてダニエル・マルディーニを、そしてCBベラト・ジムシティに代えて攻撃的MFのラザル・サマルジッチを投入。チームのアイデンティティーとも言うべき3バックを棚上げし、実質2ー4ー4の前がかりな配置に切り替える大きな賭けに出た。

 これでアタランタは徐々に攻勢に立ち、インテル陣内に押し込む機会が増え始めた。ただその分、後方の守りが薄くなってカウンターを喫するリスクも高まったため、試合はアタランタが同点に追いつくか、インテルが突き放すかというオープンかつスリリングな展開に雪崩れ込んでいった。

 しかしその流れは10分と続かなかった。テュラムのカウンターアタックを阻止するために並走してデュエルを挑んだエデルソンが、明らかに自身のシャツを引っ張った相手のファウルを取らず、しかもインテルにCKを与えた主審の判定に侮辱的な言葉で抗議。それに対して出されたイエローカードに対して挑発的な拍手で応え、さらにもう1枚のイエローカードを受けて退場になってしまったからだ。

 シーズンで最も重要であることはもちろん、クラブの歴史を左右する一戦になるかもしれない大舞台で、1点リードされて残り時間が刻々と減っていくのが、極限的な緊張とプレッシャーをもたらす状況なのは間違いない。しかし、そうした状況でも理性を失わず冷静沈着に振る舞って持てる力を最大限発揮できるかどうか、それこそが勝負の分かれ目になることもまた確かだ。

 ガスペリーニ監督は試合後、「エデルソンは本来フェアな選手だ。拍手が大きな過ちだったのは確かだが、レッドカードまで出す必要はなかったはずだ。まだ時間は十分残っていたが、あの判定が試合を壊した。試合にとっても、スタジアムを埋めた観客にとっても、残念な判定だった」と振り返った。
 
 ただ、主審の判定に対して明らかに皮肉とわかる拍手をすれば、挑発行為として無条件でイエローカードを受けるというのは、プレーヤーなら誰でも知っていること。百歩譲って、抗議による1枚目のイエローカードは情状を酌量するにしても、2枚目をもたらした振る舞い(主審への拍手)は、あまりにも軽率かつ重大な失態であると言わざるをえない。

 エデルソンのこの振る舞いが象徴的だが、ピッチ上のパフォーマンス全体を見ても、この試合のように重要な大舞台に自信と落ち着きを持って臨み、持てる本来の力を発揮できるかどうかという点において、アタランタとインテルの「経験値の差」が出た試合ではあった。
 
 それは、アタランタが持ち前の攻撃力を発揮して主導権を握って相手を押し込む場面がほとんど見られなかったのに対し、インテルがハイプレスで相手を封じながら何度か危険な場面を作るなど、ほとんどの時間帯を通じて試合のコントロールを失わなかったことからも明らかだ。

 攻撃のボリュームを示す指標となるゴール期待値(xG)は、アタランタの0.64に対してインテルは2.38。11人対10人になった87分、ラウタロが決めた2点目のゴールが、アタランタとガスペリーニの「夢」を砕くとどめの一撃となった。

文●片野道郎

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