海外テニス

ジョコビッチ、アテネ移住で大会も移転!ベオグラード・オープンが「ヘレニック・チャンピオンシップ」に改称<SMASH>

中村光佑

2025.10.24

移住先のギリシャに新設された大会に出場することになったジョコビッチ。(C)Getty Images

 男子テニスのATPツアーでは、今年新たにギリシャ・アテネで「ヘレニック・チャンピオンシップ」と題したトーナメントが、11月2日から8日の日程で開催される。ATP250カテゴリーに属し、ハードコートを使用するこの大会は昨年セルビア・ベオグラードで「ベオグラード・オープン」として新設されたばかりなのだが、元世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア/現5位)がアテネに移住したことを受け、早くも開催地と名称を変更することとなった。

 元々同大会は彼の家族が所有しており、弟のジョルジェ・ジョコビッチ氏がトーナメントディレクターを務めている。同氏は海外テニス専門サイト『The Tennis Gazette』に対し、今回の開催地移転について、次のように詳細を説明している。

「長年セルビアで大会を運営してきたが、ある時点で、ベオグラードからボスニア・ヘルツェゴビナのバニャルカに移さざるを得ない状況になってしまった。ATPが定める大会開催の基準を満たすためには、運営面や物流面で様々な手続きをクリアする必要があるが、今回はその問題を解決できず、やむを得ずアテネに移転することになった」

 そもそもジョコビッチがアテネに移住したきっかけは、セルビア国内での学生抗議デモへの支持表明だった。昨年11月から12月にかけて、ノバサド駅での屋根崩落事故により16人が死亡したことを契機に学生の抗議活動が拡大。当時ジョコビッチはSNSで「若者の力とより良い未来への願いを信じる一人として、彼らの声が聞かれることは重要だと考える。セルビアには莫大な可能性があり、教育を受けた若者こそ最大の強みだ。我々に必要なのは理解と尊重。あなたたちと共に、ノバク」と投稿していた。
 
 ところがこの発言を境に、ジョコビッチとセルビア政府との関係は悪化。同国のアレクサンダル・ブチッチ大統領は一連の抗議活動を「外国勢力による革命」と非難し、親政府系メディアはジョコビッチを「偽の愛国者」と断じた。今年7月のウインブルドンで彼が見せた「Pump It Up」のダンス(韓国製の音楽ゲームに合わせてステップを踏む動き)も、一部では反政府デモの象徴と解釈されたが、本人は「子どもたちが好きな曲にちなんだだけで、政治的な意味はない」と否定していた。

 そんな中でジョコビッチはギリシャとの関係を深めてきた。今年5月には妻のエレナさんと共にアテネ北部の高級住宅地や私立学校などを視察し、キリアコス・ミツォタキス首相とも面会。さらには「ゴールデンビザ」と呼ばれる投資家向け居住権制度を利用し、居住許可を得たとも報じられていた。家族はアテネ南部郊外の高級住宅地グリファダに住居を構え、先月には新天地での生活をスタートしたとのことだ。

 こうした背景からジョコビッチは最多7度の優勝を誇る「ロレックス・パリ・マスターズ」(10月27日~11月2日/フランス/室内ハード/ATP1000)の欠場を表明し、「ヘレニック・チャンピオンシップ」への出場を決めた。ジョルジェ氏は兄の現況について「体調も良く、アテネで可能な限り最高の状態でプレーするために全力を尽くしている」と語っている。

文●中村光佑

【動画】ノバク・ジョコビッチの「ビーストモード」テニス 10分間特集

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