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海外テニス

世界10位に惜敗も、19歳の坂本怜が手にした金星以上の収穫。「自分が120%でプレーすればワンチャン届く」<SMASH>

内田暁

2026.03.23

マイアミ・オープン1回戦で92位のコバチェビッチを破り、ATPツアー本戦初白星を挙げた坂本怜は、2回戦で元1位のメドベージェフに果敢に挑んだ。(C)Getty Images

マイアミ・オープン1回戦で92位のコバチェビッチを破り、ATPツアー本戦初白星を挙げた坂本怜は、2回戦で元1位のメドベージェフに果敢に挑んだ。(C)Getty Images

 フットボールアリーナ内に建てられた大型仮設センターコートが、波乱の予感に震えた。

 ソーシャルメディアでは、「初のトップ10選手との対戦。滑り出し、上々!」「164位が10位相手に番狂わせを演じるか!?」などの文字が躍る。

 男子テニスツアーATP1000シリーズ「マイアミ・オープン」2回戦の、坂本怜対ダニール・メドベージェフ。2本のブレークポイントを取られながらもサービスゲームを全てキープし、1度のセットポイントを凌いだ末に、坂本が7-6(10)でファーストセットをつかみ取った時のことだ。

「自分がやるべきことをまずやって、ワンチャンあれば、つかんでいきたいなと思います」

 メドベージェフとの対戦が決まった時、坂本はことさら興奮する様子もなく、そう言った。

「まあチャンスは、ほぼないんじゃないですかねぇ」

 本音か煙幕か、笑みを浮かべてそうも言う。

 ただ実際には、彼は勝利への戦略を思い描き、重い扉を押し開けるべく、試合開始直後からフルスロットルで走った。
 
 戦術の1つは「バックの打ち合いを避け、基本はフォアを狙う」こと。その上で「積極的に前に出て、ネットを取ること」を心掛けた。

 思い描いたそのプレーを、彼はコート上で見事に体現する。時速200キロ超えのサービスで先手を取り、鋭い軌道のストロークを左右に深く打ち込み、浅いボールを迷いなく叩き込んだ。相手を後方へと押し込んだ後、ドロップショットで揺さぶりもした。

 タイブレークでは、ダブルフォールトで最初のセットポイントを逃すも、下を向くことはない。勇猛に攻める長身の19歳を、観客も後押しした。最後は激しい打ち合いから、スライスでペースを緩めミスを誘う。先週の「BNPパリバ・オープン」準優勝者のメドベージェフから、坂本がセットをもぎ取った。

 第2セットも坂本は、走る足を緩めない。第3ゲームではリターンで攻め立て、3度のブレークチャンスを手にした。ただ、その機を逃した坂本の心のエアポケットを、世界10位は見逃さない。ポジションを上げたメドベージェフは、確率が落ちてきた坂本のサービスを深く打ち返し、第6ゲームで初のブレークを奪った。

 張り詰めた心の糸で保っていた均衡が崩れたこの時、坂本の勢いが、つと止まった。一方、坂本のボールにも慣れてきた第9シードは、ここで一気にプレーの質を上げる。最終スコアは、6-7(10)、6-3、6-1。元世界1位の30歳が、最後は実力と経験を存分に発揮した。
 
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