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海外テニス

【伊達公子】現役時代はメディアの裏切りで人間不信に。自己防衛で作り上げた人物像を演じる<SMASH>

伊達公子

2026.04.10

「パパラッチとの戦いエピソードは山のようにあります」と言う伊達公子さん。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

「パパラッチとの戦いエピソードは山のようにあります」と言う伊達公子さん。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 テニスのトップ選手たちはメンタル面でも強くなくては生きていけません。本来の私は強いわけではありませんが、弱いから強くなるしかありませんでした。ファーストキャリアの10代後半から20代前半で様々な経験をして、当時は人間不信になっています。

 主にメディアとの関係です。会見ではなく雑談していた内容を記事にされて、人に色々と話してはダメだと学びました。プロ1年目でランキングを急上昇させた時に寄ってきた人たちが、捻挫した途端に去っていったり、あからさまに興味がない態度になり、人間不信に拍車がかかりました。

 あることないこと言う人もいて、誰を信じていいのかわからなくなったんです。そうして、人と極力話さないようになっていきました。

 全豪オープンで準決勝に進出して帰国した時に、優勝したわけでもない中で、メディアから成田で凱旋帰国会見を開いてほしいと言われたのを拒否したら、新聞に大きく取り上げられたこともありました。国の代表として出ているオリンピックでもなく、ツアー中で真夏から真冬に戻ってきて数日後には自国での試合を控えている身です。現地に来ていないメディアのために会見をするよりも、コンディションを優先させた結果ですが、こういう部分は伝わりません。

 記事は良いことも悪いことも大きく取り上げられるため、それに振り回されないように読まなくなりました。自衛手段の一環として、会見でも表面的な答えに留めて、笑わない。そういう人物像を作り上げていったんです。
 
 当時は会見で試合と関係のない質問も多くなったため、司会の方が「テニス以外の質問になったら打ち切りになります」と言ってくれていました。しかし、1問目からテニス以外の質問が来たので、司会者から「会見を終了します」と言われたので立ち上がった時、椅子を後ろに引いたらカーペットで滑らず意図せず椅子がガターンと後ろに倒れてしまったことがあります。

 私自身も驚いたのですが、そこで椅子を戻すのもイメージ的に違うと思い、そのまま立ち去りました。すると、「ブチ切れて会見終了」と、まるで会見が終わった原因が私にあるかのような記事に。作り上げた人物像を演じても、うまくいかないことは多かったです。

 私の場合は、プライベートでもパパラッチに追われていたので二重苦でした。パパラッチとの戦いエピソードは山のようにあります。

 当時お付き合いしていた方の家も見張られていて、裏から出た所で見つかってしまった時のことです。捕まりたくなかったので、間髪入れずに走り出しました。ここから必死の追いかけっこです。かなりの距離を走り、やっとの思いで家の近くの警察署に駆け込んで逃げ切りました。

 写真を撮られないように車のトランクに入って出たこともありますし、帰宅時に待ち構えている記者がいた時には、顧問弁護士に電話で対処法を聞きながら撃退したこともあります。

 引退会見の後に友達の家でパーティーをしたのですが、なぜかパパラッチが 20 人ぐらいいて、電信柱にはカメラを付けられていたらしいです。引退後もパパラッチとの戦いは続きましたが、テニス部分のストレスが軽減されたぶんは楽になりました。

 メディア嫌いと言われても、そうしないとテニスまで崩れる危険がありました。それだけは避けたかったので、作り上げた人物像を演じていくことでバリアを作り、自分の本当にやるべきことに集中できるようにしたわけです。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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