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海外テニス

右手首負傷のアルカラスが左手でボールを打つ練習を開始! 神経系の働きを維持するリハビリ<SMASH>

中村光佑

2026.06.03

右手首の故障で戦線離脱中のアルカラスだが、左手で練習を再開したという(※写真は4月末のマドリードOP観戦時)。(C)Getty Images

右手首の故障で戦線離脱中のアルカラスだが、左手で練習を再開したという(※写真は4月末のマドリードOP観戦時)。(C)Getty Images

 右手首の負傷により戦列を離れている男子テニス世界ランキング2位のカルロス・アルカラス(スペイン)が、コートでの練習を再開した。その様子が男子テニスツアーの配信ストリーミングサイト『Tennis TV』の公式X(@TennisTV)を通じて6月2日に動画で公開され、利き手の右手ではなく左手でボールを打つ姿がファンからの注目を集めている。

 スペインメディア『Punto de Break』によれば、上記は「クロスエデュケーション(交差教育)」と呼ばれ、神経筋学的な考え方に基づくトレーニングなのだという。

 クロスエデュケーションとは、片方の手ないしは足を動かすことで、もう一方にも筋力や協調性、神経の活性化といった面で一定の効果が及ぶとされる現象のこと。アルカラスも左手で練習を行なうことで、この効果を取り入れようとしているとみられる。

 同メディアは、スポーツ医学の学術誌『Journal of Science and Medicine in Sport』に掲載されたレビュー論文にも触れつつ、クロスエデュケーションについて「筋肉そのものを直接鍛えるというより、脳や運動野、神経経路を刺激し続けることに意味がある」と解説。負傷部位を保護しながら神経系の働きを維持することで、筋力や動作感覚の低下をある程度抑えられる可能性があるとしている。

 通常、身体の特定箇所を固定すると使用頻度が大きく減り、筋力は急速に落ちる。そしてその原因は筋肉の萎縮に加え、脳から筋肉へ送られる指令が弱まることも関係している。そのため、動かせる箇所だけでも動かし続けることが、患部の機能維持に役立つケースがあるとされている。
 
 しかもテニス選手にとっては、リハビリ以上の効果も期待できる。今回のように左手でフォアハンドを打つ動作は、本来の右手でのショットを完全に再現するものではないが、ボールへの反応や距離感、体幹の回旋や体重移動といったテニス特有の動きや感覚を保つ上で大きな意味を持つのだ。

 さらに、テニスコートで身体を動かすことにより、心肺機能や判断力、競技リズム、日々の練習ルーティンも維持しやすくなる。アルカラスのように運動量の多い選手にとって、患部に負担をかけずに運動感覚を維持することは、復帰へ向けた重要なプロセスと言えるだろう。

 ただしクロスエデュケーションは医療的治療や理学療法、段階的な負荷の増加、そして実際のヒッティング練習への復帰プロセスを代替するものではない。実際、近年の研究では、動かしていない側の筋力維持や向上につながる可能性が示されている一方で、筋肉量の減少そのものを完全に防げるわけではないとも報告されている。

 それでも、右手首がまだ打球の衝撃に耐えられない段階で、神経系の働きや運動感覚を維持できるのであれば、アルカラスにとってもメリットは大きい。復帰への土台を整えるという意味でも、左手での練習は合理的なリハビリ戦略と言えそうだ。

文●中村光佑

【動画】左手でボールを打つ練習に励むアルカラス

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