海外テニス

「良いテニスができている」錦織圭が手応え十分で全米オープン3回戦へ!

内田暁

2019.08.28

勝利を決めた錦織圭!写真:山崎賢人(スマッシュ写真部)

全米オープン男子シングルス2回戦/8月28日(現地時間)
錦織圭(JPN)6-2 4-6 6-3 7-5 B・クラーン(USA)

 
 テニスとは常に、攻撃と守備、リスクと確実性、時間と空間の適切なバランスを探すゲームだと言えるだろう。ただ、自分よりも実力が上の者と戦う時は、攻撃とリスクに天秤の針は傾きやすい。全米オープン2回戦で錦織と対戦したクラーンは、まさにそのケースだった。
 
 第1セットは地力に勝る錦織が、クラーンとの打ち合いを完全に制御した。ラリーになれば、錦織に負ける要素はあまり見当たらない。サウスポーの相手のバックを付き、無理なくポイントを重ねて6-2で奪取した。

 ただこの快調に見える第1セットで、不安材料として潜在していたのが、35%の低確率を記録したファーストサービスだ。それでも序盤はコースと球種を工夫して、ラリーに持ち込むことでセカンドサービスでもポイントを奪うことに成功。だが第2セットの中盤から、リスクと攻撃に大きく心の舵を切ったクラーンが、強打で錦織を圧倒し始める。リターンでも山を張り、錦織が打つより先に回り込んで、フォアで激しく叩きだした。失う物のない相手の勢いに飲まれ、第2セット終盤で逆転を許す錦織。小雨が振る悪天候のため、唯一試合が行われているルイ・アームストロン・スタジアムに次々観客が押し寄せるなか、セットカウントは1-1となった。
 第3セットに入っても、クラーンは攻撃の手を緩めない。ただリスクを負ったプレーはいずれ、決まったウイナーを精算するかのように、徐々にエラーを生んでいく。その機を逃さず、左右からダウンザラインへのウイナーを叩き込んだ錦織が、第5ゲームをブレーク。気合いの咆哮をあげる世界7位が第3セットを奪い、第4セットでも2度ブレークして5-1と大きくリードを広げた。
 
 ところが、フィニッシュラインまであと一歩に迫ったところで再び、リスクの対価はウイナーとしてクラーンに返る。勝利を半ば確信した錦織が、「集中力を欠いた」側面もあっただろう。2度のサービスゲームをいずれも最後はダブルフォルトで落とし、瞬く間にゲームカウントは5-5となった。
 
 それでもこの時、錦織の中にはどこかで、相手のパターンを読み切っていたところがあったようだ。