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【テニスギア講座】「マルチ」は打感が柔らかく、「モノ」は高反発――ストリングの種類と特徴を知っておこう

松尾高司

2020.03.14

ストリングは素材や構造で性能が異なる。自分に合ったタイプを選びたい。イラスト:庄司猛 写真:茂木あきら(THE DIGEST写真部)

 テニスラケットに張るストリング(いわゆるガット)は、素材によって大きく「ナチュラルガット」と「シンセティックストリング」に分けられます。ナチュラルガットは牛の腸を原料とするもので、天然繊維から作られるため、非常に伸縮性に富み、性能的耐久性が高いのが特徴です。

 一方、シンセティックストリングは化学合成原料で作られており、素材的に「ナイロン系」と「ポリエステル系」に2分されます。ナチュラルガットの代替素材として使われ始めたナイロンは、総じて適度な柔軟性と伸縮性を併せ持つのが特徴。誕生以来進化が進んでおり、構造によって2タイプに分類されます。

 1つは「モノフィラメント構造」で、最初は現在のポリエステル系のような単一糸でしたが、傷がつくと切れやすいので、それを保護するために細い糸を巻き付けるようになります。メインの太い糸が「芯糸」、それを覆う細い糸が「側糸」です。太い芯糸が伸縮性のカギを握りますが、側糸には打球感をマイルドにする役割があったりもします。

 もう1つが「マルチフィラメント構造」で、複数の細い繊維を束ねて芯糸自体を構成。側糸と同じくらいの太さのフィラメントをまとめたものもあれば、さらに細い極細繊維を千本以上も束ねたものもあり、現在までに色んな内部構造が生み出されています。
 
 性能的な特徴はというと、まずモノフィラメントは、俊敏なフィーリングで反発感が高く、球離れも早い印象です。インパクト時には適度な手応えがあり、打球情報をシンプル・ダイレクト・クリアに伝えてくれます。各性能のバランスが取れているものが多いですね。

 マルチフィラメントは、モノに比べて非常にマイルドで、インパクトの衝撃を緩和してくれるため、高反発系フレームを使う人に愛好者が多いです。またボールとの接触時間が長く感じる傾向があり、「ホールド感が高い」として、パワーよりもコントロールを重視するプレーヤーがよく好みます。

 さらに、モノとマルチそれぞれの特徴を組み合わせようと、マルチフィラメントの中に太めの芯糸を仕込んだり、やや細めのモノフィラメントを数本組み合わせてマルチ化する構造も生み出され、それら中間的なタイプを総称して「モノマルチ構造」と呼んでいます。

 対するポリエステル系はほぼ完全な単一糸で、側糸を持ちません。素材自体がとても硬いので、表面に傷がつきにくく、破断しにくいのです。その代わり伸縮性を発現させるにはかなりの強打が必要。軽く当たった程度では伸縮せず、打球感は硬いですが、強烈なインパクトではギュンッと伸びてから急激に縮もうとして、一気にパワーを放出します。

文●松尾高司(KAI project)

※『スマッシュ』2017年7月号より抜粋・再編集

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