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女子最後の本格的サーブ&ボレーヤー、ノボトナ。流れるようなネットプレーは人々の記憶に残り続ける【レジェンドFILE18】

スマッシュ編集部

2020.05.17

飛びつきざまのボレーだが、全くバランスが崩れない。ノボトナの高い運動能力がうかがい知れる。写真:スマッシュ写真部

 ノボトナはシングルスにおいて、女子最後の本格的サーブ&ボレーヤーだったと言っていい選手だ。また、ラリーから流れるような展開でネットを奪うのも巧みだった。

 バックハンドは片手打ちのスライスがメインで、相手のボールが短くなればそのスライスをアプローチに使うスタイル。ストロークで一発の破壊力を持たない選手は、このノボトナのようにネットプレーを活用するのが昔のテニスだった。

 現代は選手のストローク能力向上+ラケットの進化で、ベースラインからの強打がものをいう時代。何が何でもネットに出るというオールドスタイルのテニスが、すっかり駆逐されてしまったのは、寂しい限りである。
 
 ノボトナのボレー能力は、一般に思われているよりもずっと高かった。運動能力に長け、リーチが広く、反応も早い。またボール勘やタッチも抜群だった。

 彼女がフィジカル的にかなり優れた選手だったことは、この連続写真にも表れている。遠いボールに飛びついた状況だが、身体のバランスが全く崩れていないところは見事と言うほかない。6コマ目のインパクト周辺では、咄嗟に左手を後ろに残して上体のバランスを取っており、頭は常に真っすぐに保たれたままだ。

 ノボトナがもっと早く強いメンタルを身に付けていたら、少なくともあと2、3回はグランドスラムタイトルを手にできていただろう。彼女は2017年にガンによりこの世を去った。ナンバー1の座には届かなかったが、記録よりも記憶に残るプレーヤーである。

【プロフィール】ヤナ・ノボトナ/Jana Novotna(CZE)
1968年生まれ。WTAランキング最高位2位(97年7月)。グランドスラム通算1勝(WIM:98年)。スケールの大きいサーブ&ボレーヤー。93年ウインブルドン決勝では、第3セット4-1から突然の乱調でグラフに逆転負けを喫し、心の弱さを指摘されたが、同大会3度目の決勝に進んだ98年、それを克服して涙の初優勝を果たした。ダブルスの名手としても知られ、全てのGSタイトルを獲得し、通算12勝を挙げた。2017年11月、7年間にわたる乳癌との長い闘病生活の末、チェコの自宅で死去。享年49歳。

編集協力●井山夏生 構成●スマッシュ編集部

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