全米オープンジュニア 男子シングルス2回戦/9月2日(現地時間)
A・L・リンガラバレン(ARG) 4-6 7-6(6) 6-2 望月慎太郎(JPN)
目の前に迫った勝利は、少しの運といくつかのミス、そして心の揺らぎにより遠のいていく。先のウインブルドンJr.を制し、今大会を第1シードで迎えていた望月慎太郎が、2回戦で逆転負けを喫した。
第1セットは、望月の真骨頂であるポイント構成力と、見る者を沸かせるネットプレーが冴える。第2セットも、先にブレークしたのは望月。ゲームカウント4-3とリードし、自身のサービスゲームを迎えていた。だがこのゲームの15-30の場面で、決定的に見えたスマッシュを外してしまう。自らへの憤りを抑えきれぬ様子の望月は、次のポイントも落とし、終盤にきて相手の追い上げを許した。
望月の対戦相手のリンガラバレンは、クレーを得手とするサウスポー。ナダルを崇拝する18歳は、最後まで諦めぬメンタリティをも、憧れの存在から学んでいた。第2セットのタイブレークでは、常にリードされ追いかける立場ながら、闘争心は失わない。一時は望月が5-2とリードするも、バックのパッシングショットで追いすがった。
そのような相手の粘り強さが、望月にもプレッシャーとなっただろうか。迎えたマッチポイントでは、フォアが当たりそこねてネットを叩く。 「勝ちを意識して、ビビった」というこの一打を契機に、試合の流れは変わった。ウイナーを決められ第2セットを失うと、第3セットの最初のゲームでブレークされ、第2ゲームでは左太腿に痛みを覚える。そのまま反撃の機をつかめぬまま、望月の初の全米オープンJr.は2回戦で終幕した。
第1シードの2回戦敗退に、周囲は「1位のプレッシャーか?」「拠点とするアメリカだけに思い入れが強かったのでは?」と理由を探す。だが、ウインブルドンJr.の優勝にすら「快挙と言われても……」と苦笑いしていた16歳には、ここが特別な場所だという認識や、世界1位だという過度な自意識もないだろう。現に彼は、誕生日と重なる全仏や、優勝したウインブルドンにすら「特に感情移入はない」と言う。
「大会なので。大会で優勝したいという感じなので」。それが彼が、どのトーナメントに対しても抱く、ほぼ唯一の感情だ。
ウインブルドンから2カ月近く経った今、あの優勝にどんな価値を見出すかと聞いた時、彼は「今はもう過去。テニスしている以上は、進んでいくしかないので」と言った。その姿勢は勝った時も、負けた時も同じだろう。
彼の視線はすでに前を向いている。
取材・文●内田暁
A・L・リンガラバレン(ARG) 4-6 7-6(6) 6-2 望月慎太郎(JPN)
目の前に迫った勝利は、少しの運といくつかのミス、そして心の揺らぎにより遠のいていく。先のウインブルドンJr.を制し、今大会を第1シードで迎えていた望月慎太郎が、2回戦で逆転負けを喫した。
第1セットは、望月の真骨頂であるポイント構成力と、見る者を沸かせるネットプレーが冴える。第2セットも、先にブレークしたのは望月。ゲームカウント4-3とリードし、自身のサービスゲームを迎えていた。だがこのゲームの15-30の場面で、決定的に見えたスマッシュを外してしまう。自らへの憤りを抑えきれぬ様子の望月は、次のポイントも落とし、終盤にきて相手の追い上げを許した。
望月の対戦相手のリンガラバレンは、クレーを得手とするサウスポー。ナダルを崇拝する18歳は、最後まで諦めぬメンタリティをも、憧れの存在から学んでいた。第2セットのタイブレークでは、常にリードされ追いかける立場ながら、闘争心は失わない。一時は望月が5-2とリードするも、バックのパッシングショットで追いすがった。
そのような相手の粘り強さが、望月にもプレッシャーとなっただろうか。迎えたマッチポイントでは、フォアが当たりそこねてネットを叩く。 「勝ちを意識して、ビビった」というこの一打を契機に、試合の流れは変わった。ウイナーを決められ第2セットを失うと、第3セットの最初のゲームでブレークされ、第2ゲームでは左太腿に痛みを覚える。そのまま反撃の機をつかめぬまま、望月の初の全米オープンJr.は2回戦で終幕した。
第1シードの2回戦敗退に、周囲は「1位のプレッシャーか?」「拠点とするアメリカだけに思い入れが強かったのでは?」と理由を探す。だが、ウインブルドンJr.の優勝にすら「快挙と言われても……」と苦笑いしていた16歳には、ここが特別な場所だという認識や、世界1位だという過度な自意識もないだろう。現に彼は、誕生日と重なる全仏や、優勝したウインブルドンにすら「特に感情移入はない」と言う。
「大会なので。大会で優勝したいという感じなので」。それが彼が、どのトーナメントに対しても抱く、ほぼ唯一の感情だ。
ウインブルドンから2カ月近く経った今、あの優勝にどんな価値を見出すかと聞いた時、彼は「今はもう過去。テニスしている以上は、進んでいくしかないので」と言った。その姿勢は勝った時も、負けた時も同じだろう。
彼の視線はすでに前を向いている。
取材・文●内田暁