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海外テニス

3日間かけて行なわれた、テニス史に残る11時間5分の最長試合/2010年男子1回戦【ウインブルドン名勝負】

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2020.07.02

3日間かけて戦ったイズナー(左)とマウ(右)が、歴史的スコアを前に疲労困憊で撮影に応じた。(C)Getty Images

3日間かけて戦ったイズナー(左)とマウ(右)が、歴史的スコアを前に疲労困憊で撮影に応じた。(C)Getty Images

 ウインブルドンの過去の名勝負の記事をシリーズで掲載。今回は2010年の男子1回戦で生まれた、イズナー対マウの3日間におよぶ最長試合をピックアップ。現在は各グランドスラムで独自にファイナルセットのタイブレークを取り入れており、もはや破られることのない記録となった。

   ◆   ◆   ◆

 永遠に続くかと思われた試合は、ジョン・イズナーのバックのパッシングショットがニコラ・マウの横を通り過ぎ、コート内にバウンドして終止符が打たれた。206センチの巨体がまるで逆立ちするようにコートに転がった後、すぐに歴史的な試合を作り上げたパートナーと抱き合った。

 ランキング19位のイズナーは長身で有名な誰もが認めるビッグサーバー。対するマウは、予選を勝ち上がって来たランキング下位選手。ただし、2000年のウインブルドンジュニアの優勝者で芝を得意にしていた。

 両選手ともサービスに絶対の自信を持っており、マウが「ブレークできそうだと思うと、彼はサービスエース、エースで、何もできなかった」と言えば、イズナーは「彼のサービスは8時間を通してよく跳ねた」と、お互いのサービス振り返る。異なる点は、イズナーがフォアハンドで決めるのに対し、マウはサーブ&ボレーを多用していたというプレースタイルの違いだろう。

 18時を過ぎて行なわれた彼らの試合は、セットカウント2-2の時点で21時を回り、日没順延となった。
 
 翌日"あと1セットどちらかが取れば…"という状況でスタートした試合の続きは、なおも一進一退の攻防を繰り広げる。ファイナルセット58-59。薄暗い中で4度目のマッチポイントをイズナーが握るが、マウはサービスを叩き込んで切り抜ける。そこで2度目の日没順延が決まった。

 疲労した身体のケアをして、食事を取りベッドに入っても、イズナーは4時間、マウも3時間しか寝られなかったと言う。この日だけで117ゲームも戦った彼らにとって試合は継続中で、それは確実に歴史に残るものになっていった。

 翌日、会場の門が開かれると同時に18番コートには我先にと観客が押し寄せた。試合は再びキープ合戦となる。ラリーはほとんどない。ダビングした映像を流されてもおそらく誰も気づけないほどポイントパターンはシンプルだった。

 そして、ついにこの時が来た。68-69のマウのサービスゲームで、イズナーに5度目のマッチポイント。「打とうと思った。それで失敗してもいいって、そう思った」。イズナーの渾身のリターンを、マウはサーブ&ボレー。ボレーは少し甘くなり、イズナーはパッシングショットを放つ……。
 

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