トップ選手たちが元トップ選手のレジェンドコーチをチームに招聘するようになってから久しい。レジェンドコーチたちは、どのような役割を果たしているのか。ロジャー・フェデラーのコーチを2年間務めたステファン・エドバーグが、『ユーロスポーツ』のビデオインタビューで、彼らの関係性について話した。
「もちろん、ロジャーからコーチを頼まれた時は光栄だったよ。ツアーを一緒に回る前に、ドバイで1週間、互いを知るために共に過ごしたんだ。テニス大使のようであるロジャーと一緒にいることは素晴らしかった。もちろん、テニスのこと、戦略についてたくさん話しをしたよ」
現役にして生ける伝説とまで言われるフェデラーに、エドバーグは何をコーチしようとしていたのか。ツアーを一緒に回り始めたのは2014年からでフェデラーは32歳。前年の成績は芳しくなく、2003年から常に4大会以上で優勝していたフェデラーが、1大会しか優勝できていなかった。
「彼は自分のテニスを変えようとしていた。私をチームに招いた理由の1つは、そのきっかけやアイデアを得たかったからだろう。同じような立場で決勝に進んで、テニスを変えようとしている人が周りにいることはいいことだ。年を取ればテニスを変える必要がある。その点は重点的に取り組んだ」
確かにエドバーグがコーチに就いてから、フェデラーのテニスはより攻撃的に進化していった。その変化をもたらした要因の1つがラケットの変更だとエドバーグは言う。今まで90平方インチの小さいフェイス面積のラケットを使用していたが、2014年からは97平方インチへとサイズを大きくしている。
「振り返ってみると、ラケットを最新のものに変えたことが、鍵だった。彼の動きがアグレッシブになったからね。それは必要な変化だったんだ」
2014年、フェデラーは4大会で優勝し、その後もタイトル数を増やし続けている。そのきっかけとなった年に、レジェンドコーチのエドバーグがチームにいたことは、大きな意味があったに違いない。
ノバク・ジョコビッチのコーチを3年間経験したボリス・ベッカーも、『ユーロスポーツ』のビデオインタビューに答えた。主に取り組んでいたのは、メンタル面と大きな試合へのアプローチの仕方だったと言う。そして少しだけロッカールームでの様子を教えてくれた。
「私が初めて帯同した時のこと。すでにノバクとロジャーはライバル関係にあったけど、試合前に、ステファンと私と4人で雑談したんだ。試合後のロッカールームも奇妙な風景だったと思うよ。選手2人がコーナーから、自分のコーチを見ていたんだ。公園を散歩しながらしゃべっているような、私とステファンの姿をね」
レジェンドコーチたちが持ち込んだ空気感。それは勝敗が明確に表れる厳しい勝負の世界において、少しだけ緊張を和らげる役割もあるのかもしれない。
文●誉田優
フリーライター。早稲田大学スポーツ科学部卒業。
Twitter:yu__honda/Instagram:yu__honda
【PHOTO】史上最強の王者!絶大な人気を誇るロジャー・フェデラーの「ウインブルドン2019」
「もちろん、ロジャーからコーチを頼まれた時は光栄だったよ。ツアーを一緒に回る前に、ドバイで1週間、互いを知るために共に過ごしたんだ。テニス大使のようであるロジャーと一緒にいることは素晴らしかった。もちろん、テニスのこと、戦略についてたくさん話しをしたよ」
現役にして生ける伝説とまで言われるフェデラーに、エドバーグは何をコーチしようとしていたのか。ツアーを一緒に回り始めたのは2014年からでフェデラーは32歳。前年の成績は芳しくなく、2003年から常に4大会以上で優勝していたフェデラーが、1大会しか優勝できていなかった。
「彼は自分のテニスを変えようとしていた。私をチームに招いた理由の1つは、そのきっかけやアイデアを得たかったからだろう。同じような立場で決勝に進んで、テニスを変えようとしている人が周りにいることはいいことだ。年を取ればテニスを変える必要がある。その点は重点的に取り組んだ」
確かにエドバーグがコーチに就いてから、フェデラーのテニスはより攻撃的に進化していった。その変化をもたらした要因の1つがラケットの変更だとエドバーグは言う。今まで90平方インチの小さいフェイス面積のラケットを使用していたが、2014年からは97平方インチへとサイズを大きくしている。
「振り返ってみると、ラケットを最新のものに変えたことが、鍵だった。彼の動きがアグレッシブになったからね。それは必要な変化だったんだ」
2014年、フェデラーは4大会で優勝し、その後もタイトル数を増やし続けている。そのきっかけとなった年に、レジェンドコーチのエドバーグがチームにいたことは、大きな意味があったに違いない。
ノバク・ジョコビッチのコーチを3年間経験したボリス・ベッカーも、『ユーロスポーツ』のビデオインタビューに答えた。主に取り組んでいたのは、メンタル面と大きな試合へのアプローチの仕方だったと言う。そして少しだけロッカールームでの様子を教えてくれた。
「私が初めて帯同した時のこと。すでにノバクとロジャーはライバル関係にあったけど、試合前に、ステファンと私と4人で雑談したんだ。試合後のロッカールームも奇妙な風景だったと思うよ。選手2人がコーナーから、自分のコーチを見ていたんだ。公園を散歩しながらしゃべっているような、私とステファンの姿をね」
レジェンドコーチたちが持ち込んだ空気感。それは勝敗が明確に表れる厳しい勝負の世界において、少しだけ緊張を和らげる役割もあるのかもしれない。
文●誉田優
フリーライター。早稲田大学スポーツ科学部卒業。
Twitter:yu__honda/Instagram:yu__honda
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