今年のウインブルドンは残念ながら中止となってしまった。そこで過去の名勝負の記事をシリーズで掲載。今回は1990年男子決勝、ステファン・エドバーグ対ボリス・ベッカーだ。
◆ ◆ ◆
イワン・レンドルの執念もベッカーの粘りも、貴公子を阻めはしなかった。
6月25日から7月8日まで、英ロンドン郊外のオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブを舞台に開催された第104回ウインブルドン。男子決勝は3年続けてエドバーグとベッカーの間で争われ、2セットアップしたエドバーグがベッカーの猛迫を退けて2年ぶりの笑顔を見せた。
エドバーグが2セットをリードしたかと思えばベッカーが追いつく、「めったにお目にかかれない決勝」(ベッカー)。そのファイナルは、おそらく男子決勝史上初めての麗しき抱擁だった。
プロ入り後の両者対戦成績は、この試合前までベッカーの15勝8敗(直近6試合では5勝1敗)だが、2人はジュニア時代から何度も対戦した間柄だ。
「同じ時代に育ち、ランキングも抜きつ抜かれつ。今後何年もそうなるだろうし、レンドルの王座に挑めるのは僕とボリスしかいない」(エドバーグ)とお互いを認め合う。そんなライバル意識と呼ぶには温かすぎる感情の交流が、史上初の珍事を生んだ。
決勝が3年連続同じ顔合わせというのは、前年の優勝者が決勝へ素通りできる方式をとっていた、1890年代以来のこと。クレーの全仏オープンでは、ともに1回戦で沈んだ両者が、グラスでの強さを見せつける結果となった。
対戦成績ではベッカーが優勢とはいえ、これまで決勝では1勝1敗。立場的には五分と見ていい。ところが、立ち上がり、疲労度の差がスコアになって表れる。
準決勝でレンドルを「これ以上望めない最高の出来」で一蹴したエドバーグに対し、ベッカーはゴラン・イバニセビッチを「極限の戦い」で振り切る大苦戦。その疲労で朝起きた時から身体が重く、最初の2セットをともに2-6で落とす。この時点では「少なくとも1セットは取りたい」が本音だった。
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イワン・レンドルの執念もベッカーの粘りも、貴公子を阻めはしなかった。
6月25日から7月8日まで、英ロンドン郊外のオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケー・クラブを舞台に開催された第104回ウインブルドン。男子決勝は3年続けてエドバーグとベッカーの間で争われ、2セットアップしたエドバーグがベッカーの猛迫を退けて2年ぶりの笑顔を見せた。
エドバーグが2セットをリードしたかと思えばベッカーが追いつく、「めったにお目にかかれない決勝」(ベッカー)。そのファイナルは、おそらく男子決勝史上初めての麗しき抱擁だった。
プロ入り後の両者対戦成績は、この試合前までベッカーの15勝8敗(直近6試合では5勝1敗)だが、2人はジュニア時代から何度も対戦した間柄だ。
「同じ時代に育ち、ランキングも抜きつ抜かれつ。今後何年もそうなるだろうし、レンドルの王座に挑めるのは僕とボリスしかいない」(エドバーグ)とお互いを認め合う。そんなライバル意識と呼ぶには温かすぎる感情の交流が、史上初の珍事を生んだ。
決勝が3年連続同じ顔合わせというのは、前年の優勝者が決勝へ素通りできる方式をとっていた、1890年代以来のこと。クレーの全仏オープンでは、ともに1回戦で沈んだ両者が、グラスでの強さを見せつける結果となった。
対戦成績ではベッカーが優勢とはいえ、これまで決勝では1勝1敗。立場的には五分と見ていい。ところが、立ち上がり、疲労度の差がスコアになって表れる。
準決勝でレンドルを「これ以上望めない最高の出来」で一蹴したエドバーグに対し、ベッカーはゴラン・イバニセビッチを「極限の戦い」で振り切る大苦戦。その疲労で朝起きた時から身体が重く、最初の2セットをともに2-6で落とす。この時点では「少なくとも1セットは取りたい」が本音だった。