海外テニス

ATPがツアー再開にあたり、ランキング算出方法を改定。選手に選択の範囲が広がる【海外テニス】

酒井朋子

2020.07.12

昨年の全米優勝のナダル(右)と準優勝のメドベージェフ(左)。今季全米を欠場しても昨年のポイントが維持される。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 男子プロテニス協会(ATP)は、8月14日からツアーを再開するにあたり、世界ランクの調整について公式ホームページで発表した。

 新型コロナウイルスの影響により、ATPツアーは3月以降中断し、世界ランクは3月16日以来凍結されている。ツアー再開に向けて世界ランクの計算方法が一時的に改訂されることになった。

 通常は、52週間に出場した大会のうち、成績の上位18大会のポイントの合計が反映される。今回の改訂では、2019年3月から2020年12月までの22カ月間のうちの上位18大会が対象となることとなった。

 2020年に追加されたツアーレベルの大会のポイントは、52週間か、2021年に同大会が開催されるまでか、どちらか早い方のタイミングまでランキングに換算される。

 健康面や安全を考えて2020年のツアーに出場できない、または出場しないことを希望する選手たちにとっては、2019年に獲得したポイントが失われることがないためランキングが極端に下がる心配はなくなる。

 2019年と2020年に同一の大会に出場した場合は、より成績の良かったどちらかのポイントが加算されることになる。選手たちへの公平性を考えたとのことだが、完璧に公平にすることは難しいだろう。2019年に好調だった選手にとっては当然有利な条件となる。
 
 このシステムは、ビッグ3にとってどのように影響するのだろうか。

 現在2位のラファエル・ナダルは、2019年の全仏オープンと全米オープンで優勝を果たしているため、8月31日からの全米オープン、9月に開催される全仏オープンに仮に出場しなくても、昨年獲得したポイントが反映されるため、現在の順位を維持できる。

 現在1位のノバク・ジョコビッチは、昨年の全米オープン4回戦、全仏オープン準決勝より良い成績であれば、ナダルとのポイント差をさらに広げることができる。ただし、ジョコビッチは全仏、マドリードなどのヨーロッパの大会は参戦予定だが、全米オープン出場については明言を避けているようだ。

 4位のロジャー・フェデラーは右ヒザの故障で今季は出場しないことを表明しており、昨年のポイントがそのまま残ることになる(全仏ベスト4、全米ベスト8)。6位のステファノス・チチパスや7位のアレクサンダー・ズベレフがよほどの活躍をしない限りは5位以内をキープできる。

 また、2019年の全米オープンで準優勝したダニール・メドベージェフも、全米オープンで優勝しない限り、今回のランキングシステムの恩恵を受ける選手のひとりとなるだろう。

 このランキングの改定は、4つのグランドスラムとITF(国際テニス連盟)との協議の上で決定されたものである。もしも2021年シーズンも新型コロナの影響を受ける場合は、また検討されることになっている。

文●酒井朋子

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