国内テニス

「たかが柏のチャンピオン」年齢という概念のない42歳、最年長の世界ランカー松井俊英が見る夢【国内テニス】

内田暁

2020.07.28

今年1月開催の『ATP CUP』では世界の強敵を相手に日本代表としてダブルスを戦った42歳の松井。(C)Getty Images

 端正な相貌と引き締まった身体に、ラフに羽織った派手なシャツが良く似合う。

「年齢は、歳を取るにつれて自分のコンテンツ力というか、だんだんウリになってきた。そこを出した上で、若手やランキング上位の選手相手に、シングルスでも体力勝負でどれだけ付いていけるかですね」

 今年4月に42歳の誕生日を迎えた松井俊英は、ATPシングルスランカーの中で最年長。その活躍の主戦場はダブルスだが、昨年はシングルスでもATPチャレンジャーの予選に挑戦し、24歳年少選手との"世代間バトル"をも制する。今年1月には日本代表としてATPカップにも参戦し、溌剌としたプレーは『大会最年長者』の肩書と共に注目を集めた。

 経歴的にも、やや異色な選手だと言えるだろう。

 地元の千葉県柏市でテニスを始めたのは、10歳の時と遅め。16歳でトロントに語学留学し、テニスの腕も磨きつつハワイの大学へと進学。プロ転向は、心理学の学位を習得した後のこと。そんな独立独行の自身のキャリアを、彼は「俺なんてたかが柏のチャンピオン」と、自嘲気味かつ矜持を込めてラベル付けした。
 
 7月に兵庫県で開催された『Beat Covid-19 Open』でも、得意のネットプレーを散りばめた洒脱なテニスで、現場で見る関係者たちを唸らせた。

「去年はとても調子が良かったし、体力を維持するのにも色々なやり方がある。回復力を上げるダイエット(食事療法)もあるし、今は体脂肪を落として筋力をつけることにトライしているので、それがテニスのパフォーマンスにも繋がれば…」

 コロナ禍の時期も含めたこの2年ほど、松井は「自身の変化や進化を楽しめている」と言った。 

 もっとも、3月にツアーの中断が決まった当初は、気持ちと身体を繋ぎ止める困難さにも直面した。年齢のことを考えれば、「いつやめてもおかしくない」というのは偽らざる気持ちだろう。

 だが、「いつやめてもおかしくない」との諦観は、突き詰めると「言い方は悪いけれど、引退してもしなくても一緒のような感じ」の境地へと達する。
 
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