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【錦織圭・全仏テニス名勝負集1】初出場&初白星は今から10年前。相手は難敵のクレーコーター/2010年1回戦

スマッシュ編集部

2020.09.26

2010年、ヒラルドから全仏初白星を挙げ、インタビューを受ける錦織。表情に初々しさが残る。写真:THE DIGEST写真部

 全仏オープンテニス開催に合わせて、月刊スマッシュの過去のリポートの中から、錦織圭の「全仏名勝負」をピックアップしてお送りする。1回目は本戦初白星を挙げた2010年1回戦、サンチアゴ・ヒラルド(コロンビア)との激闘だ。

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 ヒジのケガから復帰した錦織が、本戦初出場のローランギャロスで大逆転劇を演じ、初戦突破した。約1年ぶりにコートに立ったのが2月。だがヒジの回復はまだ十分ではなく、結局、本格的に戻れたのは全仏直前の5月だった。

 そこから2週連続でチャレンジャーを制覇し、この本戦ドローに滑り込む。本格復帰後、最初のツアーレベルの大会が、グランドスラムとなっていたのだ。その1回戦のヒラルド戦は衝撃的だった。

 第1セットは積極的に色々なプレーを試みるもミスが多く、簡単にブレークされて落としてしまう。第2セットに入ると、チャレンジャークラスの相手から50位台の選手に対応 しつつあったが、それでも相手のヒラルドは単調に粘れるだけでなく、得意のスピンを生かし、あの手この手でミスを誘ってくるクレーコーター。攻撃的な錦織のエラーを待つスタイルは、相性の点でも分が悪かった。
 
 しかし、2セットダウンで迎えた第3セットから「もう少し自分から攻めていこう」とプレーを切り替えた錦織は、鋭くなったサービスをベースに、ショートクロスやドロップショットを織り交ぜて相手を走らせ、逆に3セットを連取してしまう。第4セット以降は完全に主導権を握り、足の止まった相手に次々と攻撃を仕掛けていった。

 当初のゲームプランが崩れていても、試合の中で修正法を見つけていく。そうして相手を凌駕していく中で、トリッキーなボレーやドロップショット、ダウンザラインへの素早い仕掛けなど、錦織らしいプレーも披露した。

 かつて悩んでいた、楽しむプレーと勝つプレーの折り合いの問題も、「今は自分が楽しむプレーを心掛けなくても、いいテニスができている」と自然と解消。失っていたリズムや感覚を取り戻してきたことで、両者が一致してきたようだ。

 大逆転への興奮など微塵も感じさせず、淡々と苦戦を振り返った錦織だが、グランドスラム復帰初戦で5セットを戦い抜いたことで得たものは、とても大きかったはずだ。

◆2010年1回戦
錦織圭[26 46 76(3) 62 64]サンチアゴ・ヒラルド

構成●スマッシュ編集部

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