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海外テニス

「テニス選手の価値とは何か…」全仏初勝利の日比野菜緒が乗り越えてきた壁【女子テニス】

内田暁

2020.09.30

前哨戦で2人のビッグネームを破っている日比野が、全仏オープンでも好スタートを切った。(C)Getty Images

前哨戦で2人のビッグネームを破っている日比野が、全仏オープンでも好スタートを切った。(C)Getty Images

 大会3日目を迎えた全仏オープンは、シングルス男女1回戦の残り全試合が行なわれ、日本勢では日比野菜緒、内山靖崇、土居美咲が登場。

 予選上がりのマルタ・コスチュクと当たった日比野は、18歳の若さを老獪とも言えるプレーで翻弄し、6-4、6-0で同大会初勝利を手にした。

 それは、自身の“内面的成長”が感じられた瞬間だったという。

 試合開始早々に相手のサービスをブレークし、ゲームカウント3-1で迎えた第1セットの第5ゲーム。ここでもブレークポイントを手にした日比野だが、リターンミスでその機を逃す。そこからは連続でポイントを失い、続くゲームで許したブレーク。気持ちが乱れ、流れが反転しても不思議ではない……そのような局面だった。
 
 だがこの時の日比野は、苛立つことなく、感情を制御できている自分に気づく。

 戦術面でも、冷静だ。

 高い軌道のフォアハンドでダウンザランに先に展開し、相手を押し下げていく。今大会の重いコンディションに効果的だと言われるスライスも多用し、相手の強打を巧みに封じた。

 最後はフォアの逆クロスで、第7ゲームをすかさずブレーク。中盤のターニングポイントを制した日比野が、第1セットを奪取した。
 
 第2セットに入ると、両者の心理のコントラストは一層鮮やかさを増す。

「先週のストラスブール国際から、攻撃的にいくことを試みていた」というリターンは、積極的かつバリエーション豊富。浅いサービスを叩いてすぐに前に出たかと思えば、今度は前に出る姿勢をフェイントにしてストロークで優位に立つ。時にはスライスも混ぜたリターンに、まだ若い相手は対応しきれない。

 すねたように表情をしかめ不満を言葉に出すコスチュクと対象的に、淡々と、なおかつ内に秘めた闘志を保つ日比野が、セカンドセットは相手にわずか7ポイントしか許さぬ電車道。本戦出場3度目にして、うれしい全仏初勝利をつかみとった。

 苦手意識を抱く今大会での初勝利の要因を、精神面の安定に見出した日比野。その背景にあるものは、自分自身、そして外界と向き合い獲得した、世界に対する新たな視座だという。
 
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