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国内テニス

あの金髪ロン毛の太った人は誰? テニス芸人“ボヨン・ボルグ”が誕生するまで【前編】

内田暁

2020.12.02

加藤未唯(右)と共に和歌山のクリニックに登場したバモス!わたなべ(左)。そのいでたちはもちろん“ボヨン・ボルグ”だ。写真:内田暁

加藤未唯(右)と共に和歌山のクリニックに登場したバモス!わたなべ(左)。そのいでたちはもちろん“ボヨン・ボルグ”だ。写真:内田暁

「もし僕らに勝ったら、初心者マークが付いた真っ赤なポルシェがもらえます! 負けた方には、車検落ちの軽トラが届きますんで」

 その一言に、参加者たちからどっと笑い声が上がった。

 和歌山市のテニスクラブ「ワカヤマテニススクール」で行なわれた、ダイドードリンコ協賛のテニスクリニックでの1コマ。ゲストコーチの加藤未唯の新車をネタに、金髪ロン毛の男性が、軽妙なトークで場の雰囲気を和ませていった。

 往年の名プレーヤー、ビヨン・ボルグを模したいでたちは、今やテニス会場やイベント等でおなじみの姿。彼の顔はテニスファンなら、おそらくは誰もが一度は目にしたことがあるだろう。ただ彼が何者か、そして彼がテニスに注ぐ情熱を知っている人は、もしかしたら少ないかもしれない。

 芸名“ボヨン・ボルグ”あるいは“バモス!わたなべ”。本名、渡邉弘征。

 現在の肩書は“テニス芸人”。
 そんな彼の、もともとは、そして行く行くは……。人懐っこい笑みにボッチャリ体型がトレードマークのお笑い芸人の、横顔に迫ってみよう――。
 
「実は僕、いつ“芸人”でなくなっても良いかなって思っています。テニス関係者として、テニスに携わっていければ」

 短く刈り込んだ黒髪の青年が、真摯な口調で想いを丁寧に紡ぐ。彼のアイデンティティを構築する成分は、今や「テニス」が「芸人」を上回っているという。

 そんな彼のテニスとの出会いは、宮崎県延岡市に住む高校時代。理由は「ラクそうだから」という、いわば消去法だった。

「僕、高校に入るまではラグビーやバレーボールをやっていたので、高校でもバレーやりたかったんです。なのに入った高校には、男子バレー部がない。でも学校の方針として、部活に必ず入れという感じだった。だったら一番ラクそうな部にしようと思って、テニス部にしたんです」

 当時のテニス部は部員も少なく、開店休業状態。ところが彼が入学した年に、生徒そのものが増えたこともあり、部員数が急増した。しかもその大半は、軟式テニスの経験者。全くの初心者の渡邉少年は、彼ら軟式上がりには歯が立たなかった。

 ただ、なかなか勝てないだけに、ポイントを取った時の高揚感は「団体競技では味わえないレベル」だったという。上の存在を抜いていく疾走感も、彼をテニスにのめり込ませた。
 

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