国内テニス

エンターテイナーのアラジに憧れ、現実的にはスウェーデン選手を参考にした佐藤文平【プロが憧れたプロ|第15回】

赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

2021.01.10

佐藤氏はテクニシャンのアラジに憧れてラケット回しに挑戦していた。(C)Getty Images、THE DIGEST写真部

 現在、プロとして活躍している選手も、現役を引退してコーチをしている人も、小さい頃には憧れのプロがいたはずだ。【プロが憧れたプロ】シリーズの第15回は、現在テレビ解説でもお馴染みの佐藤文平氏に話を聞いた。

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「テクニシャンで勝負勘が強く、型に捕らわれないテニスをする、モロッコのヒシャム・アラジです」と、憧れの選手を聞いた時、佐藤文平氏は即答した。「ここでサーブ&ボレーをするのか!」「カウンターを突然打った!」と見ていて驚かされるテニスに魅了されたそうだ。

 アラジはキャリアハイ22位ながら、ツアーでも人気者の1人だった。彼のラケットをクルクルと回す様は格好よく、当然佐藤氏もマネをしていた。錦織圭にとっても憧れの選手であり、2人でアラジの話で盛り上がったこともあると言う。

「エンターテインメント性が高いプレーが好きでした。ないものねだりです(笑)。マネしようと挑戦していましたが、なかなかできませんでした。でも、『好きこそ物の上手なれ』で、できないことに挑戦するのは技術の進歩にはつながりました」と、子ども時代を振り返る。
 
 佐藤氏にとって「ないものねだり」だったアラジに対し、プレーの参考にしていたのは、スウェーデンの選手だった。小学校3、4年の時にスウェーデンに住んでおり、1994年のデ杯準決勝スウェーデン対アメリカも生で観戦しているのだ。

 そこでは、ピート・サンプラスを含むスター軍団のアメリカに対し、スウェーデンという小さい国が勝利を挙げる感動的なシーンが展開された。ステファン・エドバーグやマグナス・ラーソン、ヨナス・ビヨルクマンらの、愚直なテニスが自分には合っていると実感し、参考にするようにしたのだ。

 この劇的勝利は後の佐藤氏にも大きな影響を与えた。ATP自己最高ランキングは661位(14年10月20日付)で、グランドスラムの舞台に立つことが難しくなってきた時、「現役後もテニス界で挑戦していこうという夢をもらった」と言う。

 スウェーデンで生活した経験によるグローバルな視点と、持ち前の行動力でコネクションを作り、グランドスラムを目指す選手のサポートをすることにした。現在は大学卒業後にプロに転向した島袋将のコーディネーターとして、プロの世界で右往左往することなく突き進めるように環境を整えている。

 憧れたアラジと参考にしたスウェーデンの選手たち。夢を見ながら、地に足を付けて前に進む佐藤氏にとって、プロを夢舞台に導くサポート役は適職だろう。

取材・文●赤松恵珠子(スマッシュ編集部)

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