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【伊達公子】プロの世界で生きていくには何が必要?大坂なおみのようなフィジカルがないなら…<SMASH>

伊達公子

2021.05.07

反応の早さかしつこさか。どちらのスタイルを目指しているのかわかりづらい選手が多いという伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 コロナ禍の今の状況で私がプロになりたての選手だったとしたら、フィジカルを鍛えることに時間を使います。

 いつもトレーナーの方に「もうちょっと時間がないと追い込むにも追い込めません」と言われていました。テニス選手はオフシーズンが短いので、フィジカル強化は簡単ではありません。だから、試合に当分出ないと決めたら、テニスをする回数を抑えて、トレーニングに取り組みます。

 私はプロになると決めた時、高校生でしたが合宿を何度もしてかなり追い込みました。身体が一回り大きくなるぐらい。でもプロの世界に出ていくと、差を感じさせられました。

 プロになりたての日本の女子選手が、トレーニングをやっているか、やっていないかは身体を見たらわかります。だけど、目的を明確に継続的に取り組み、身体が出来上がってきている選手はあまりいないように感じます。

 アジア人で、大坂なおみ選手のようなフィジカルがない場合は、やっぱりパワーで向き合うことは無理です。そこを補うために、何かをする必要が絶対にあります。スピードとパワーがないぶん、何を自分の強みとするのか。

 それは、反応の早さやしつこさです。では、どれぐらいしつこくなれるフィジカルを持っていないといけないのか? そうやって見ると、日本人でそのフィジカルを持っている人はあまりいませんね。どんなスタイルを目指しているのか、見えづらい選手が多いと思います。
 
≪自分が置かれている位置やタイプを考えて決断≫

 選手として経験を積んでいる場合のコロナ禍での過ごし方はまた違います。ランキングや年齢など、自分が置かれている位置を考えて、試合に出続けることにするか、国内に留まるか。これは選手個人の考え方ですね。

 あとは自分のタイプにもよります。大坂なおみ選手のように、ポンッと試合に出ても、あまり関係なくプレーできるタイプがいれば、錦織圭選手のように試合から離れると感覚を失ってなかなか結果が出にくいタイプもいます。自分に合った方法を選ぶしかありません。

 ただ日本人の場合は、試合のために海外に出て行ったら、ある程度回る方が賢明です。移動も大変ですし、帰国後の2週間隔離もありますから。金銭的なことも考えると、数大会で戻るより、長く回った方が効率的です。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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