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海外テニス

浮上する“二つの対照的な数字”から見た錦織圭の現在地。完全復活のカギを握る「足りないところ」とは?

内田暁

2021.05.30

昨年より十分な実戦を積んで全仏を迎える錦織。グランドスラムで久々の上位進出なるか。(C)Getty Images

昨年より十分な実戦を積んで全仏を迎える錦織。グランドスラムで久々の上位進出なるか。(C)Getty Images

 二つの対照的な数字がある。一つは0勝6敗。もう一つは8勝2敗。

【PHOTO】全仏で上位進出を狙う錦織圭、2021年シーズンの戦いぶりを厳選写真で特集!

 最初の数字は、今季の対トップ10の戦績。そして二つ目は、13位のダビド・ゴファンを筆頭とした、50位以上の選手から得たものだ。

 ツアーを主戦場とする、ほとんどの選手には負けない。だが、正真正銘のトップからの勝利には、いつも僅かに手が届かない。それが、世界ランキング上は49位という数字を与えられた錦織圭の現在地だ。

 錦織が、対トップ10から最後に勝利を挙げたのは、2018年11月、ATPツアーファイナルズのロジャー・フェデラー戦。翌19年は、シーズンの大半を肘の痛みを抱えながらの戦い。20年は、コロナによるツアー中断と肩の痛みのために試合数は6つに限られ、それも本調子にはほど遠かった。

 今季は3月のロッテルダム大会以降、かつてのボールを打ち抜く感覚を取り戻し、本人も「もう言い訳はできない」と、復調宣言とも取れる言葉を口にした。改良中のサーブや、技術的にも勉強中というボレーは日によって出来不出来があるものの、ストロークに関しては力強さと展開力を恒常的に披露している。
 
 それだけに本人も「だいぶ近づいていると思うんですが、もうちょっとというところが、もどかしい」と歯がゆさを禁じ得ない様子だ。

 もっとも、今季の6度のトップ10との対戦を子細に見れば、そこには肉薄の足跡が浮かび上がる。

 最初の対トップ10は、メルボルン開催のATPカップでの、対ダニール・メドベージェフ戦。この時は、渡豪後の2週間完全隔離が明けたばかりだったため、身体の状態を確かめながらの試合となり、ストレート負けを喫したが、試合後に口にした「思ったよりも良いプレーができた」というのは率直な思いだろう。

 その翌々日のディエゴ・シュワルツマンとの対戦では、1セットを奪うも「感覚が良くなかった」と視線を落とす。健闘してなお落胆する姿からは、自分に課すハードルの高さがうかがえた。

 3度目の対トップ10は、マイアミ・マスターズでのステファノス・チチパス戦。自分の現在地を知るうえでも「楽しみ」と向かった戦いでは、ペース配分お構いなしに立ち上がりから全力でボールを叩いた。結果、第3セットで息切れするも、世界5位を圧倒する猛攻も見せた。
 
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