専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

浮上する“二つの対照的な数字”から見た錦織圭の現在地。完全復活のカギを握る「足りないところ」とは?

内田暁

2021.05.30

「良いところと悪いところが、本当にフィフティ・フィフティくらいだった。良いとも悪いとも言えない試合というか……良いプレーが出ていた時もあったけれど、それが続かなかったので」

 チチパス戦後の言葉には、一定の満足感と落胆が入り混じる。フルスロットルの攻撃がトップ10を打ち破る力を秘めていながら、それを3セット継続するには、いまだ体力や集中力の持続性足りない……マイアミのコートからは手応えと課題を持ち帰った。

 戦いの場を欧州のクレーに移して迎えた今季4度目のトップ10は、世界3位のラファエル・ナダル戦だ。赤土で挑む赤土の王は、第1セットは1ゲームも与えてくれぬ壁として立ちはだかった。

 それでも2セット目以降は互角に近い攻防を繰り広げ、終わってみればフルセットの熱戦。ナダルをして「十分、トップ10に戻る力がある」と言わせしめるほどに、躍動の足跡を赤土に刻んだ。

 そして直近は、アレクサンダー・ズベレフとの2連続対戦である。
 
 マドリード・マスターズでのズベレフは、最終的に同大会を制するほどに絶好調。バックの爆発的な強打を早いタイミングで叩き込んでくる世界6位に、錦織は「今までの対戦のなかでも、桁違いに強かった」と脱帽するしかなかった。

 それが翌週のローマでは一転、両者の対峙は熱を帯びる。第1セットを奪い、もつれこんだ最終セットでは錦織がゲームカウント4-1とリード。だがそこで、「自分で打たなくなった」ことを彼は悔いた。

「そういうところが、今の自分に足りないところ」

 全仏オープンの開幕を控え、錦織はあの時の敗因をそう振り返る。勝敗が掛かった局面で、自分を信じ切ることができない。ただそれは換言すれば、その「足りないところ」さえ補えれば、トップ10に勝てるとの手応えでもあるだろう。

 追い求めるトップ10からの勝利を、ローランギャロスでつかむことができるだろうか?ドローを見ることのない錦織は、あみだくじのように交錯する道のどこで、彼らと相対するかを知りはしないだろう。

 一応ここに記しておくと、その可能性は4回戦。相手は、ズベレフだ。

取材・文●内田暁

【PHOTO】全仏で上位進出を狙う錦織圭、2021年シーズンの戦いぶりを厳選写真で特集!

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号