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海外テニス

18歳の望月慎太郎が、初のグランドスラム予選で得たもの。ジュニアとの違いは「選手のプレーの質が落ちない」こと<SMASH>

内田暁

2021.06.25

パワーがあってプレーの質が落ちないツアーレベルの選手と、どう戦っていくか。望月慎太郎はその答えを敗戦の中から感じ取った。(C)Getty Images

パワーがあってプレーの質が落ちないツアーレベルの選手と、どう戦っていくか。望月慎太郎はその答えを敗戦の中から感じ取った。(C)Getty Images

 1-6、6-2、6-4のスコアが、望月慎太郎というプレーヤーの個性と哲学を、そのまま映し出すようだった。

 主催者推薦を得て出場した、ウインブルドン予選の1回戦。対戦相手は、昨年の全仏オープンでスタン・ワウリンカを破り4回戦に進むなど、センセーショナルな活躍を見せた160位のヒューゴ・ガストン(フランス)。

 その実力者を相手に回し、グランドスラム予選初出場の18歳は、鮮やかな逆転勝利をつかみ取った。

 予選ワイルドカード取得の報が届いた時、望月は「ものすごく興奮した」という。ウインブルドンは2年前に、ジュニア部門の頂点に立った「一番好きな大会」。予選は本戦と会場が異なるが、それでも「出られるというのが、とにかくうれしかった」と喜びを隠さない。

 昨年はコロナ禍のため、ジュニアから一般への大切な移行期に、試合ができないもどかしさを味わった。ただ、2年前より一回りも二回りも大きくなった身体が、重ねてきた努力を物語る。

 今季は、3月のマイアミ・マスターズで予選を勝ち上がるなど、“大人”たちとも渡り合える手ごたえも得てきた。純粋な喜びと自分への期待を抱えながら、3週間前に18歳の誕生日を迎えたばかりの望月は、ウインブルドンへと続く芝のコートに立っていた。
 
 その興奮と久々の芝のテニスの特性が、立ち上がりは望月を悩ませただろう。サウスポーから繰り出されるガストンのサービスと、ドロップショットに適応するのにも時間がかかった。5ゲーム連取を許し、第1セットは瞬く間に相手の手に渡った。

 ただ、ワンサイドに見えるスコアの中で、18歳は相手のプレーを分析し、徐々にリターンのタイミングが合う感触もつかんでいたという。ガストンのショットは多彩ではあるが、パワーや球威で押されはしなかった事実が、落ち着きの根底にもあったようだ。

 第2セットは、望月がブレークで先行。自身のサービスをキープし切れぬ苦しさはあったが、「追いつかれても焦らないで続けていこう」と自分に言い聞かせ、集中力を研ぎ澄ませた。

 分析力および適応力を発揮し奪ったのが第2セットなら、第3セットでは、泥臭いまでの勝利への執着をたぎらせる。ストロークを深く打ち込むと、迷うことなくネットに出た。ドロップショットに食らいつき、ロブを豪快に叩き込む。終盤の競り合いを制したのは、声を出し自分を鼓舞し続けた18歳だった。
 
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